散で2300億m3が失われ、国土に賦存する水資源総量は4200億m3である。しかし約8割の水資源は川を下り海へ直行し、日本国民の水資源の年間使用総量は791億m3(水資源賦存量の約19%)で、河川水が702億m3、地下水が88億m3である。最大需要先は農業用水で535億m3(年間水使用量の67.5%)、工業用水は106億m3(同13.5%)、我々の生活用水は150億m3(同19%)である。1)日本国民一人当たりの水資源量 国連食糧農業機関(FAO)の公式データによると、国民一人当たりの世界平均水資源量は7300m3/人・年である。これと比較すると、我が国は3400m3/人・年と1/2以下であり、首都圏だけで見ると、北アフリカや中東諸国と同程度である。またダムでの保有水量を比較すると、日本のダムの総貯水量は約204億m3で、これは米国のフーバーダム(約400億m3)の半分である。また国民一人当たりのダム総貯水量を米国(3384m3/人・年)と比較すると日本は73m3/人・年と米国の2%しか保有していない。中国(392m3/人・年)と比べても19%以下であり、将来の水飢饉に対し、日本は貯水量の備えが足りない極めて危険な国である。また日本の将来の水資源に対し、次の項目も危惧されている。(1)地球温暖化の加速で豪雨と渇 地球温暖化は降水量だけでなく、降雨強度や頻度も大きく変化させ、その結果、豪雨や渇水に脅かされる地域が増大する。 日本の水資源の約3割は春先の梅雨、秋の台風によってもたらされる雨水により支えられている。特に問題なのは春先の稲作など必水に脅かされる(30)第1970号 令和4年6月14日(火)発行 する行為への課税――の2案について論議され、今のところ②案の「地下水を製品化し、貨幣価値に換算された時点での課税」に賛成する委員が多かったと報告されている(読売新聞オンライン/2022. 3. 29)。一方、県内のミネラルウォーター業者が課税分を商品に上乗せした場合、競争力を失い、静岡県や他の県の業者が有利になり、仮に課税分を商品に上乗せできなかった場合、県内業者の利益減により、県の税収が長期的にマイナスになる可能性も論じられた。(※法定外目的税:自治体が条例を制定し、総務大臣の同意を得て独自に徴収する税)2)業界は大反発 当然のことながら業界の反発は強く、全国清涼飲料連合会と日本ミネラルウォーター協会は「私水への課税は法的根拠に欠ける、飲用目的の採取行為にのみ課税するのは公平性に欠ける」と導入に反対する意見を表明している。 事実、山梨県の平成25年「地下水涵養に関する指針」では、山梨県は生活用水の約50%、工業用水の約80%を地下水に依存し、地下水が県民生活や地域産業の共通の基盤であると明らかにしている。つまり地下水への課税は、全県民や地元産業(ワイン、ビール、酒製造業、加工食品業)が対象となる可能性を秘めている。地下水への公平な課税に向け、山梨県は難しい判断を迫られている。2.日本の水資源は大丈夫か 国土交通省発行の「令和3年度日本の水資源の現況」によると、過去30年間の平均値で国土に降った年間降水量は世界平均の約2倍の6500億m3/年。このうち、蒸発 要な時に、必要な水資源量を確保できなくなることである。 反面、気象庁のデータでは全国的に集中豪雨が増加する傾向が長期的に続いている。しかし洪水等を引き起こす集中豪雨は使えない水資源の増加でもある。(2)積雪はどうなる 稲作地域では、雪解け水を苗代用水として活用してきたが、地球温暖化により、雪解けが早く始まり必要な時に水が不足する傾向が出てきている。積雪量は全国的に減少が続いており、1962年からの50年間で年最深積雪量は、東日本で56%、西日本では72%、北日本で18%減少している(いずれも日本海側)。 では全国的に減少しているかと言えば、北海道や本州の豪雪地帯では、逆に積雪が増える傾向もみられる。これは海面水温が上がり大気中の水蒸気量が増え、雪雲が発達しやすくなっているためで、降れば地域的に大雪になる。豪雪地帯では、大雪の頻度も増加している。気象庁の予測では今世紀末に温室効果ガスが現在の1.8倍に増加した場合、冬の平均気温は3~3.5℃上がり、その結果月ごとの積雪量は本州のほとんどの地域では数十センチ減少するが、北海道や本州の豪雪地帯では逆に20~40センチ増加するとみている。つまり夏にみられる「ゲリラ豪雨」と同じようなメカニズム、「雨が降れば豪雨」「雪が降れば豪雪」の傾向が増加する予測が出されている。積雪は「天然のダム」と言われているが、温暖化の加速で不安定な水資源となっている。秋田と青森県にまたがる白神山地の湧水は雪解け水が主体で、硬度がわずか0.2mg/Lと超軟水で知られている。第3種郵便物認可
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