(392m3/人・年)と比べても19%以下であり、将来の水飢饉に対し、貯水量の備えが足りない極めて危険な状態である。しかし今更ダムの新設は難しく、既存ダムのかさ上げや、堆砂処理で保有水量を増すことくらいしかできない。それに対し、日本には下水処理水(年間154億m3)という宝物がある。平成17年に「下水処理水の再利用水質基準等マニュアル」が制定されたが、平成28年度で、わずか2億m3(総下水処理水の1.3%)しか活用されていない。(JS技術開発情報メール№226)今後は下水再利用水による温暖化対策(CO2削減効果を定量化)とし、農業用水や地下水涵養、工業用水、修景用水等への積極的な市場開拓が求められている。3) 米国カリフォルニア州の水資源確保への挑戦 米国経済を支える最大の州であるカリフォルニア。面積は日本より9%広く、人口は約4000万人、第3種郵便物認可 ▲ 米国カリフォルニア州 再生水工場の現状(出所:California Water Boards ”Volumetric Annual Report” June 11 , 2021、和文加筆:筆者)州内総生産(GSP)は2兆7400億ドル(2017年実績)であり、加州を一つの国と仮定して他国と比較した場合、イギリスやインドより大きい経済規模を有している。その加州の経済を底辺で支えているのが、水資源である。近年、水不足に悩まされている加州は、水資源の確保が経済の生命線である。表流水の主役のコロラド川からの水利権問題の解決が長引く中、新たな水源確保の手段として、下水処理水の活用が待ったなしの状態に直面している。(1)水管理規範「タイトル22」 加州の水管理の規範「タイトル22」(2019年ガイドライン発効)は、特に消毒された下水二次処理水で使用可能な24の特定用途や三次再生水使用で許可される40の特定用途が定められている。農産物や果物への灌漑、住宅造園の灌漑、商業用ランドリー、装飾的な噴水用途、商業ビルのトイレ用水などで、州の水委員会は申請されたプ 第1961号 令和4年2月8日(火)発行(33)ロジェクトの管理や提出されたエンジニアリングレポートをレビューし指導・承認を行っている。 州内には429の下水処理場が存在し、そのうち261ヵ所の下水処理場で再生水を生産している。2021年時点で再生水を年間約728万エーカー・フット(89億7624m3)生産しており、さらに再生水管理の一環として2030年までに年間再生水生産を200万エーカー・フット(24億6600万m3)かさ上げ増加させる目標を掲げている。短期的な再生水プロジェクトには8億ドル(約920億円)が用意され、長期的には30億ドル(約3450億円)の資金提供を準備している。さらに興味あるのは下水処理水中の栄養分の活用である。(2) 海藻で温暖化防止……下水処理水の栄養分活用 「海藻は気候変動を緩和する希望の象徴である」として8つの州内の企業が、州の海域に海藻農場を計画している。海藻は炭素を吸収し、その生産物は食品、燃料、肥料として活用できる。海藻が成長するには、海水と日光と栄養源(下水処理水中の栄養源)しか必要としない。「青い経済と呼ばれる持続可能な海藻資源」を活用するために、海藻農場計画を州議会へ申請する準備を進めている(サンフランシスコ・クロニクル紙)。さいごに 日本は四季に恵まれ、今のところ、短期的な水循環がうまくまわっているが、長期的な展望として「持続可能な水資源として下水処理水の活用」を、さらに推進すべきである。下水処理水は宝の山である。
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