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(32)第1961号 令和4年2月8日(火)発行 ▲深層大循環の流れ(出所:NASA/JPL、和文加筆:筆者)エンジンは、海水の重さである。南極や北極付近の表層海水が大気で強く冷やされるために重くなり沈んでいき、それまで深層にあった海水を押しのけて全世界の海洋の深層を巡り、最後は表層水と混じり合いながら上昇し暖かい表層水になる。問題は、その循環する時間である。海洋学者により様々な意見があるが、おおよそ深層水の平均年齢は1000歳で、深層海流が沈降してから浮上するまで1500~2000年の時間がかかるともされている。この深層大循環が地球温暖化に大きな影響を及ぼしている可能性は多くの学者から指摘されているが、あまりにもスケールが大きい課題(移動機構とタイムラグ)なので、研究が進んでいない。ぜひ流体を研究している若い人たちに解明をお願いしたい項目である。2. 深層大循環が狂い始めると、どんな影響が出るのか 深層大循環は、海流の循環による熱移動であり、過去1000年以上にわたり気候変動の幅を、時間的にまた空間的に穏やかにし、人間が居住できる気候を造ってきた。人々は、その恩恵を受けて生命を繋いできた。仮に、この熱移動がなくなり、または移動速度が極端に遅くなれば、低緯度地域は現在よりはるかに高温気象に、高緯度地域は現在よりはるかに低温気象になることが予想されている。当然のことながら世界各国は気候変動対策として長期的な水資源確保に乗り出している。1)日本の水資源の現状 国土交通省発行の「令和3年度日本の水資源の現況」によると過去30年間の年間降水量の平均値は世界平均の約2倍の6500億m3/年で、蒸発散で2300億m3失われ、国土に賦存する水資源総量は4200億m3である。しかし約8割の水資源は川を下り海へ直行で、日本国 民の水資源年間使用総量は870億m3(平成15年度、水資源賦存量の約20%)である。その内訳、最大需要先は農業用水で572億m3(年間水使用量の66%)、工業用水134億m3(同15%)、我々の生活用水は164億m3(同19%)である。2)日本の長期的な水資源確保は 国連食糧農業機関(FAO)の公式データによると、国民一人当たりの世界平均水資源量7300m3/人・年と比較すると、我が国は3400m3/人・年と2分の1以下であり、首都圏だけで見ると、水不足が定常化している北アフリカや中東諸国と同程度である。またダムの保有水量を比較すると、日本国内ダムの総貯水量は約204億m3で、これは米国のフーバーダム(約400億m3)の半分である。また国民一人当たりのダム総貯水量を米国(3384m3/人・年)と比較すると日本は73m3/人・年と米国の2%しか保有していない。中国第3種郵便物認可

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