(32)第1958号 令和3年12月14日(火)発行 た。 多国籍軍(米軍が主体)で使われたミサイルや弾丸は、ほとんどが米国製で武器弾薬・在庫一掃セールとも呼ばれ、その攻撃映像は全世界に配信、米国製兵器の優秀さがPRされた。戦費総額611億ドルのうち、約520億ドルは他国(日本を含む)の負担で、米国の負担はわずかであった。日本は憲法上の制約から軍隊を出せず、財政支援として130億ドルを負担した。だが湾岸戦争終結後もサダム・フセインは水道復旧を諦めなかった。将来のイラク石油採掘権を、ロシア、ドイツ、フランス、中国などに与える約束で前金を受け取り、武器や水道機材を購入、またパイプラインの復旧や給水車を増強し、イラク国民の安全な水へのアクセスは65%台まで回復した。4)イラク戦争勃発 (2003年3月~2011年12月) 米軍が主体となる有志連合による「イラクの大量破壊兵器義務違反」を理由とする軍事介入が「イラクの自由作戦」と名付けられ、戦争が開始された。再びイラクの軍事施設、通信施設、浄水場などが、今度はGPS付きのミサイルで完全に破壊された。その結果150万人以上のイラク国民に水に由来する健康被害が続出、乳幼児死亡率も増加▲自衛隊・サマワにおける給水支援活動 (写真出所:自衛隊広報誌、図出所:朝日新聞、2003年12月20日)した。さらに劣化ウラン弾(放射能を含む)の使用で、白血病やガンが誘発されたとも言われている。劣化ウランは、核兵器の原料となるウラン235を濃縮する際、不純物として分離された放射能を有する金属である。その比重は19(鉄の比重は7~8)で、着弾時に高温を発し、強い貫通力を発揮するために対戦車砲として使用された。着弾時には、激しく火花を散らし、酸化ウランの微粒子を周囲にまき散らす。雨が降れば放射能を持った微粒子は地下浸透し、地下水の放射能汚染を引き起こした。 湾岸戦争で約500t、イラク戦争で約300tの劣化ウラン弾が使用されたと米国議会では報告されている。劣化ウラン弾は、核兵器でもなく、放射線兵器にも分類されず、大量破壊兵器でもなく、国際的にも野放しの状態である。さいごに……日本のイラク貢献 日本によるイラク人道復興支援は2003年12月に閣議決定された。 イラク復興支援として特別措置法を制定、主項目は①医療支援と して病院の運営。維持管理、住民診療の実施、②給水支援として河川水を浄化し、生活用水として住民に配給、③学校等の公共施設の復旧・整備、であり、可能な限り現地住民に雇用の機会を作ることであった。自衛隊による活動地域は、最も貧しいムサンナ県の非戦闘地域(サマワ)で展開された。その2ヵ月間の給水実績はムサンナ県水道局へ4340m3、自衛隊駐屯地へ4070m3、オランダ軍へは420m3であった。それまで不衛生な水を飲まされていた住民からは「日本の自衛隊の水を飲んだら病気が治った」と評判になった。2004年5月にイラクから撤退する時に、現地で使用していたRO膜付きの浄水装置は、すべてイラク側に寄贈され運転が継続された。日本政府は、その後「当面の支援」として15億ドルの無償資金援助(電力、教育、水、衛生など)、さらに「中期的な支援」として35億ドルの円借款(インフラ整備に充当)、最大約60億ドルの支援を実施した。まさに国民の命は水で支えられていると言えよう。第3種郵便物認可
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