第3種郵便物認可 さらに水資源量だけではなく、水質汚染も深刻になっている。2)飢餓人口 アフリカ人口の約8割の人々が農業で生計を立てている。そしてアフリカの家計は、60~80%という高い割合で食料の確保に費やされている。近年の大規模な干ばつや、異常気象によって家族みなで育てた小麦やトウモロコシなどの穀物類の収穫が激減し、国全体が大規模な飢餓に恐れている国も多くなっている。勿論、内戦や部族間の対立により、水源や食料、土地そのものを奪われてしまい、さらなる飢餓人口を増加させている。 世界の飢餓人口は2017年に8億2100万人と推定されており、アフリカだけに焦点を当てると3人に1人が飢餓という高い割合を記録し、約2億6千万人が栄養不足に陥っている。つまり水さえあれば飢餓が救える状態である。2.アフリカの水災害 アフリカの飲料水問題(安全な水の確保)については、既に国連や世界的なNGO、NPOにより報道され理解が進んでいるが、ここではあまり語られない水災害について触れてみたい。 アフリカは気候変動に対し、最も脆弱な地域として知られている。厳しい干ばつ被害は多く報道されているが、逆に水インフラが整備されていない地域に大雨や洪水が起こると甚大な被害をもたらしている。▲2050年における世界の水質汚染地図 アフリカおよびアジア地域の汚染拡大 出所:Veolia/IFPRI(2015, fig. 3, p. 9) 1)大規模水災害(2003年) 2003年に起きたスーダンからチャドに至る全域で洪水が頻発した。西部アフリカのナイジェリアでは11万戸以上が倒壊し31万人が避難し、急激なダム放流により100村が浸水し900農場が流出した。同じく北部アフリカの大雨で、チュニジアの川が氾濫し2万7千人が避難している。この地域は4年間の干ばつ被害後、10年来の大雨洪水被害が出た。東部アフリカのケニアでは、ビクトリア湖の大洪水で100万人が避難、スーダンでは35万人が被害を受け8割がホームレスになった。南部アフリカでは、マラウイでは40万人が、モザンビークでは42万人、ザンビアでは3万人が被害を受けている。このようにアフリカ全体では250~300万人の被害者が出ている。 勿論人的被害だけではなく、直接被害として農地の流出、冠水被害、家屋の倒壊、道路・橋梁の流出、水道施設の破壊なども頻発し、さらなる貧困のスパイラルに陥っている。2)サイクロン大災害(2019年) 巨大サイクロンによる被害も報告されている。2019年3月には過 第1903号 令和元年10月8日(火)発行(39)※ 水ストレス:一人当たり年間使用水量1700m3を下回ると日常生活に不便を感じる状態を示す。去最大級のサイクロン(イダイ)がアフリカ南東部を直撃した。被災者は260万人以上で、モザンビーク中央部だけで40万人が住宅を失い、死者は1000人を超えるとみられている。隣国のマラウイでは92万人が被災している(国連筋の発表)。3.日本の果たす役割は アフリカは世界最後の新市場ともいわれているが、水問題が軽視されている。日本は水と衛生分野で世界のトップランナー(水分野のODA)であった。我々の先達の苦労を無駄にしないように、再度、アフリカ支援や技術の移転に取り組むべきであろう。特にアフリカ地域で頻発する水災害に対する防災・減災協力、河川管理、下水道の整備など、わが国には水災害防止について様々な優れた技術やノウハウが蓄積されている。アフリカを含む途上国の開発において、「防災・減災の主流化」を推進することは、他国にできない日本の貢献策となるだろう。
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