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SEW2.水資源を巡る国家間の争い 国連加盟国(193ヵ国)で自国の水源を保有している国はわずか21ヵ国である。日本は島国なので当然、すべて自国の水源である。自国の水源がない国(離島国を除き)はすべて国際河川を通じ、他国に頼っている。生活に必要なモノが不足すると、そこに必ず、紛争と関連ビジネスが勃発する。水を巡る争いは年々増加し、激化している。ここに中東イラクで起きた過去事例を紹介する。3.水と石油は国家なり…… サダム・フセイン物語 イラクはメソポタミア文明の発祥の地で、チグリス・ユーフラテス川流域の周辺都市は、水が豊かだが、基本的には砂漠の国(年間降雨量216mm、国土面積は日本の1.2倍)である。またイラクは世界で3番目の原油埋蔵国でもある。砂漠では「水の一滴は、血の一滴」であり昔から水争いが絶えなかった。チグリス・ユーフラテス川はグローバル・ウォーター・ナビ 公益財団法人「日本国防協会」から要請を受け、元防衛省の上級幹部や自衛隊元海上幕僚長など、国防に関するVIPを前に講演した。演題は「水なくして、国防なし」。筆者にとり世界の水資源の危機的な状況や、今後の水資源の確保などは慣れている講演テーマであったが、国防と水との関係は初めてである。ぜひ“水の視点から国防”を考えてみたい。1.国防とは、水資源の確保である 国防とは、「国外に存在する敵が行う自国への侵略手段への対抗手▲水を巡る世界の紛争地域(出所:PACIFIC INSTITUTE ,『Water Conflict Chronology』)(30)第1958号 令和3年12月14日(火)発行 段として、主に軍事的手段を行使する国家活動」であると定義されている。筆者は国防の基本は何があっても国民の命を守ることであり、「国民の生命を底辺で支えているのが、水資源である」と主張した。世界人口は今、約77億人、2050年には90億人に達する予測も出ている。過去100年の歴史を振り返ると、人口増加率の2倍が水需要の伸びであった。これから絶対的に世界は水不足に直面することになる。繰り返しになるが、国防とは水資源の確保である。第3種郵便物認可水なくして、国防なし吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]79

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