5.世界各国の水素に係わる 投資額◦ EUは経済対策として7500億ユーロ(97.5兆円)を投資する。◦ ドイツは水素製造能力拡大として80億ユーロ以上(1.04兆円)。◦ ポルトガルは国家水素戦略として70億ユーロ(9100億円)。◦ デンマークは大規模水素生産として11億ユーロ(1430億円)。◦ 英国は民間会社5社で9億ポンド(約1200億円)の投資額である。 EU加盟各国の具体的な戦略、例えばドイツの動きを見てみると、ドイツ政府の経済・エネルギー省は国内230件の応募から厳選された62件の水素関連プロジェクト(PT)※1に対し総額80億ユーロを助成。同省が44億ユーロ、交通・デジタルインフラ省が14億ユーロ、その他州政府も水素助成に参加している。この水素関連PTに参加する民間企業の投資額を含めると総額330億ユーロ(4兆2900億円)に及ぶ。ドイツが、水素社会構築の主導権を取ろうとする本気度が推察される。さいごに 欧州では大規模な投資で官民を挙げた水素社会への取り組みが加速しているが、日本では政府やエネルギー企業が水素活用の道筋を明確に描けていない。遅れを取り戻すためには、大胆な政策決定が必要である。※1:ドイツのプロジェクト詳細https://www.bmwi.de/Redaktion/DE/Downloads/I/ipcei-standorte.pdf?__blob=publicationFile&v=6■再生可能エネルギーのコスト比較(各種資料からGWJ作成)種類事業用太陽光発電陸上風力発電洋上風力発電※FIT制度による買取価格第3種郵便物認可 いる。再生可能エネルギー分野での雇用は、2050年までに、今日の水準の4倍に相当する4200万人に増加し、エネルギー分野全体の雇用は、今日より4千万人増加し1億人(2050年時点)に達するとみている。 EUの積極的なエネルギー政策に比べ、日本は周回遅れのエネルギー政策である。電力は、すべての産業のコメであり、電力コストが安くならなければ水素も安くならない。3.水素発生用・水電解装置 水素発生で最も安い原料は水であり、地球上に海水も含め普遍的に存在する。世界の水素発生用・水電解装置の流れは、大きく3分野に分けられる。1)アルカリ水電解型2)固体高分子電解型(PEN型)3)高温蒸気電解型 現在、精力的に開発が進められているのは、上記3方式の中で最も効率が良いとされている固体高分子電解型である。 水の電気分解、原理は簡単であるが、経済的に大規模にするためには多くの課題が残されており、具体的には以下のような課題解決策が世界各国で競われている。① 水素発生に係わる電力費削減:水素1Nm3(0℃、1気圧、1EU(2019年実績)(2021年度*) 7.48円/kWh11円/kWh+税 5.83円/kWh17円/kWh+税12.65円/kWh32円/kWh+税m3のガス量)発生時の電力5.0kWh/Nm3から4.0kWh/Nm3へ。20%削減する。② 水素発生装置の建設費低減:水素1Nm3発生当たりの装置、現在の100万円/Nm3から40万円/Nm3へ。③ 新規電極、触媒の探索・研究・実証試験など、高価な白金触媒に代わる安価な触媒が探索されている。④ 水電解装置の電源(電圧、電流、パルス電源、高周波電源併用など)⑤ 副産物・酸素の活用(既に市場確立、即お金になる)4.世界の水電解装置プレイヤー ドイツを中心に大規模、精力的に展開されている。 アルカリ水電解装置はNel社、Hydrogenics社などが、固体高分子型では、Siemens社、Nel社、ITM-Power社が大規模・実証中である。さらに安価な再生可能エネルギーを用い、PTG(Power To Gas)として発生させた水素を天然ガスパイプラインへ供給している。 米国GE社は同国エネルギー省(DOE)とAdvanced Energy System/Hydrogen Turbineプロジェクトで大規模水素発生装置を開発中である。日本倍率(日本/EU)1.47倍2.92倍2.53倍 第1952号 令和3年9月21日(火)発行(35)
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