SEWグローバル・ウォーター・ナビ 第7回アフリカ開発会議(TICAD7)は8月30日、横浜宣言「アフリカの経済成長の進展をめざす」を採択して閉幕した。日本は会議を通じて民間主導の投資拡大(約2兆円)を訴え、政府としては投資拡大の環境を整える人材育成を前面に掲げた。安倍晋三首相は、筆者の参加した民間のセミナーでも「相手国(アフリカ諸国)が借金漬けになっては、皆様のアフリカ進出を妨げる。日本政府として重点国を毎年10ヵ国選び、向こう3年間、延べ30ヵ国の担当者に公的債務やリスク管理の研修をする」と強調した。さらに安倍首相は、民間企業によるアフリカへの投資を促進するため、政府系の保険会社「日本貿易保険」やJICA(国際協力機構)を通じ、使い勝手のいい透明性の高い融資を進める考えを示した。 会議の重要性を鑑み、麻生副総▲本会議場(パシフィコ横浜)▲サイドイベント会場▲G8インターナショナル社のブース で河野外相(中央)と(左端が筆者)(38)第1903号 令和元年10月8日(火)発行 理・財務大臣や河野外務大臣もアフリカ諸国のトップと多くの会談を持った。しかし民間企業の反応は低調である。 政府は経済界に対し、ODA増額が望めない中、しきりに民間に投資拡大を促してきた。結果は日本貿易振興機構(JETRO)によると日本の対アフリカ直接投資残高は16年末99億ドル、18年末87億ドルと横ばいである。なぜ日本企業はアフリカ投資に消極的なのか。 今回のTICAD展示会場(パシフィコ横浜)には150社を超えるブースがあり、大きな企業の幹部に尋ねると①政情的に不安定、テロ、強盗などで社員の命を守れない国が多い、②インフラが未整備(電力、通信、道路など)、③衛生的な環境が整っていない、具体的には安全な水の確保、衛生的なトイレ環境、廃棄物処理などが挙げられた。このように水の確保が大きな課題の一つであることを指摘された。 投資促進の前に、もう一度アフリカ最大の課題である水問題について提起してみたい。1.アフリカの水資源と飢餓 国連の調べによると、アフリカの人口増加率は高く、2017年段階では約12億人だったが2050年には現在の2倍以上に当たる25億人になると予想されている。 急激な人口増加は食糧の需要を高め、さらに農業、牧畜を問わず、生きるために重要な資源である肥沃な土地や水資源をめぐる争いに突入している。 過去100年の歴史からみると人口増加率の2倍が水需要であった。現在のアフリカの水資源でさえ極端に不足なのに、アフリカ諸国の将来は「今後の水資源の確保に委ねられている」といって過言でないだろう。1)アフリカの水賦存量 国連が2014年に発表した「世界水発展報告書2014」によるとアフリカ全体の水資源賦存量は3931km3/年であり、世界の水資源に占めるその割合は9.2%であった。 具体的には、一人当たりの水資源量は世界平均6100m3/年であるが、既にアフリカは世界平均の6割しか水資源が無い状態である。第3種郵便物認可TICAD7 投資の前に水問題解決を吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]53
元のページ ../index.html#5