■宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)選定結果第3種郵便物認可 よる公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)に基づき応募者から優先交渉権者を選定し公表した(21年3月15日)。1)優先交渉権者および次点交渉権者 優先交渉権者は「メタウォーターグループ(代表企業:メタウォーター)」とし、同者の提案を踏まえた「20年間における予定事業費総額」は約2977億円で、県の予定事業費総額(3314億円)より約337億円の縮減が期待できる。 次点交渉権者は「みやぎアクアイノベーション(代表企業:前田建設工業)とした。JFEグループは選定基準未達で失格となった。3. 「みやぎ方式」について県民から不安の声 県側の説明会(令和3年度、事業説明会資料)で提示された県民の不安の声は多岐にわたっている。①料金の決定方法、②地元企業の仕事が無くなる不安、③海外では水道・再公営化(民から官へ)が主流と聞いたが、逆行ではないか、④実施契約書の改定、県民にとって不利な内容になっていないか(知的財産権対象技術)、⑤事故や災害時の対応が不安、⑥県職員の技術力はどう維持していくのか、⑦採算が合わなくなった場合、会社は撤退しないのか、などである。(詳細は宮城県公式ウェブサイト「みやぎ型管理運営方式構築に向けて」に掲載、また説明会の模様は、YouTubeで公開済み)4.過去のPFI事業から学ぶ1)内閣府報告「期間満了PFI事業検証ヒアリング結果」(令和元年11月)メタウォーターグループ(優先交渉権者)出資比率34.5%0.5%34.0%15.0%8%3%2%1%1%1%メタウォーターメタウォーターサービスヴェオリア・ジェネッツオリックス日立製作所日水コン橋本店復建技術コンサルタント産電工業東急建設◦20年間の運営権者収受額:約1563億円(税別)◦出資比率は特別目的会社(SPC)設立の際の出資比率を示す◦ 選定基準未達により失格扱い:JFEエンジニアリンググループ(構成員:JFEエンジニアリング、東北電力、三菱商事、明電舎、水ingAM、ウォーターエージェンシー、NJS、日本政策投資銀行) 内閣府は、PFI法施行初期に実施し、満了期間を迎えた11事業(実施期間10~18年間)の検証結果を公表している。◦ 事後評価の実施方法および、その予算措置が確立されていない。◦ サービス水準の向上は期待通り、または期待以上の効果が得られた。◦ しかし収益性は想定の範囲内が多数を占めた。◦ 次期事業に向けた検討では、①次期修繕リスクの官民分担が極めて難しい、②次期事業応募者数が少ない、などが留意点とされた。②に関して5事業の抽出結果を見ると、1期応募者の平均が4グループであるのに対して、次期応募者の平均は1.4グループであり、1期事業者とそれ以外の事業者ではノウハウの蓄積に差があり、競争に勝てる可能性が低いことが挙げられている(寡占化問題)。さいごに 長年、国内外の水ビジネスの動向を俯瞰してきた筆者の意見は、次の通りである。構成員 第1944号 令和3年6月1日(火)発行(43)みやぎアクアイノベーション(次点交渉権者)構成員前田建設工業スエズウォーターサービス月島機械東芝インフラシステムズ日本管財環境サービス日本工営東日本電信電話東急月島テクノメンテサービス① 公共財としての水道事業が公営・民営を問わず、その経営が歪められることがあってはならない。② 水道事業体の8割を占める中小規模の事業体経営は、技術・組織・人材・財務等において、健全な経営とは言えない状況である。③ 広域化による規模の拡大は避けられない。しかし自治体の広域化だけでは解決しない課題も多い。④ 広域化において官民連携は救世主の一つだが、課題山積、これからが勝負で、一歩一歩解決する努力が必要である。「みやぎ方式」の基本協定書案では、民間に大きな期待と厳しい管理要綱が求められているが、一番の問題は、発注者側に従来の執行方法をはるかに超えた高度な知識と判断能力を持つ人材が欠如していることである。プロジェクトマネージメント専門家による支援体制を整えるべきであろう。 全国初で最大規模の「みやぎ方式」が日本水道の将来を示唆する試金石になることを期待したい。出資比率39.5%34.5%4%5%5%5%5%1%1%
元のページ ../index.html#46