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SEWグローバル・ウォーター・ナビ 「みやぎ方式」とは「宮城県が所有する上下水道と工業用水の運営権を一括して20年間、民間に売却」する全国で初めての取り組みである。その規模も過去最大で、水道給水人口は約189万人、下水道処理対象人口は約73万人である。 では、なぜ宮城県は「みやぎ方式」に踏み切ったのか? 水道事業は利用者が支払う水道料金収入で賄われる。しかし人口減少や節水機器の普及で収益が毎年目減りしている。また施設の老朽化も加速し、更新財源の不足にも陥り、このままでは、大幅な水道料金の値上げが避けられない状況に直面する。そこで県が着目したのは、政府が進めている「民間活力の導入」である。現在でも県の上下水道や工業用水の運転管理は民間に委託している。しかし、その積算基準は県当局が仕様や数量を定めた、いわゆる「仕様書発注」であり創意工夫の余地が少なく、大幅なコスト低減は望めない。 これに対し「みやぎ方式」は、“民間の創意工夫やスケールメリットを活かせる「性能発注」”により、上・下・工水の計9水事業に関する20年間の運営権を民間に売却し、将来の水道料金の値上げ幅を最小限に抑える施策案である。 昨年3月に運営権者の公募を開(42)第1944号 令和3年6月1日(火)発行 始、今年3月に応募した3グループの中から「運営を担う優先交渉権者」に「メタウォーターグループ」を選定した。メタ・グループは10社で構成され、世界最大の水メジャーである仏・ヴェオリア傘下のヴェオリア・ジェネッツも含まれている。 この全国初の「みやぎ方式のゆくえ」について、全国の水道事業体は、大きな関心を寄せている。1.「みやぎ方式」 県の方針 昨年3月に公表された公募内容では、①水道用水供給事業2事業(水道水の卸売り事業で25市町村へ給水)、②工業用水事業3事業(68社へ用水供給)、③流域下水道事業4事業(21市町村の下水処理)の計9事業を対象事業とし、事業期間を20年間としている。1)県の設定した事業費削減目標 上記の9事業を県単独(現行体制モデル)で20年間実施した場合の総事業費は3314億円であるが、今回の民間委託(PFI・コンセッション方式)で実施した場合は3067億円と試算され、削減額は約247億円を目標とする。2)入札参加要件(第一次審査基準)①代表企業の資本金は50億円以上②運転管理実績を有する企業◦ 上水道事業:処理能力日量2.5万m3以上の浄水場施設で連続して3年以上の運転管理実績◦ 下水道事業:処理能力日量10万m3以上の下水処理施設で連続して3年以上の運転管理実績③ 外国為替および外国貿易法第26条に該当しない企業◦ 外国に主たる事務所を有する団体ではないこと、つまり国内法人であること。3)運営権者の収受額の改定① 概ね5年に一度(県が行う定期料金改定に併せる)改定を行う。② 需要変動・物価変動・法令変更等、事業環境の変化を反映させる。③料金等の改定は県が行う。4)事業経営モニタリングとペナルティ① 3段階のモニタリング体制(運営権者、県、第三者機関の委員会)とする。② 運営権者の責めに帰す未達レベルに応じ、違約金(ペナルティ)を課す。5)今後の予定 6月の県議会で可決されれば、厚生労働大臣の認可を経て、2022年4月に事業を開始する計画である。6)リスク管理……県が全責任を負う 「みやぎ方式」提案当初から不安視されているのは、①勝手に値上げされる、②水質管理の保証、③サービスの低下、④災害時の対応、⑤経営破綻の可能性、⑥運営権が外資に売り渡される可能性あり、などである。 これらリスクに対し県は、「運営は民間に委託するが、県が最終的な全責任を負う仕組みであり心配ない」と言明している。2.優先交渉権者の選定結果 宮城県は「民間資金等の活用に第3種郵便物認可~9水事業を20年間、民間に運営権を売却~みやぎ方式のゆくえ吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]73

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