▲グローバルビジネスは買収合戦◀ 2001~2017年にGE9代目の会長を務めたイメルト氏。エコマジネーションを強力に推進した▲ 筆者(左)は2012年6月、イメルト氏とグランド・ハイアット東京で面談。氏は「水は世界の問題だ、GEは水に力を入れている!」と語った第3種郵便物認可 力会社・イノジー(Innogy)やテムズウォーター(2000年に買収)、米国のアメリカン・ウォーター・ワークス(2001年買収)やカリフォルニア・アメリカン・ウォーター、チェコのトランスガス(同2002年)など、各国の民営化された水道・電力・ガス会社を買収し、「マルチ・ユーティリティ企業」の急先鋒として多国籍化を推進した。しかしRWEは再生可能エネルギー分野への出遅れ、ドイツ政府の脱原発政策に伴い経営が急速に悪化し、2013年には赤字決算に転落した。当然、今まで買収した水企業を手放し、従来の電気・ガス事業に専念することとなった。2 )ゼネラル・エレクトリック(GE) 2001年からGEの最高経営責任者(CEO)に就任したジェフリー・イメルト会長は、従来の金融サービスからの撤退を進め、GE本来のビジネスである製造業に軸足を移す劇的な変化を成し遂げた。その一つが水ビジネスへの傾注であった。 豊富な資金力で、1999年のグレッグウォーター買収を契機に、ベッツデアボーン(水処理)、オスモニクス(フィルター、膜ろ過)、アイオニクス(イオン交換技術)、ゼノン(膜処理)買収など積極的に買収を展開した。 アジア展開で際立ったのは2008年、北京オリンピック関連の335を超えるプロジェクトを行い、総額17億ドル(約1870億円)を売り上げている。水関係では水資源の統合管理や処理、国家体育場(国立スタジアム)の雨水回収システム、競泳場の水浄化、南堡汚水処理場にRO膜装置納入などを手掛け、その勢いでアジア戦略を進めた。しかしイメルト会長の提唱する「エコマジネーション」(全社的イニシアティブ)は浸透せず、水ビジネスもジリ貧となっていった。2012年6月、筆者はGEジャパンから連絡を受けた。訪日するイメルト会長が「日本およびアジアの水市場について、専門家から直接話を聞きたい」との要請であった。面談の際、イメルト会長は開口一番「GE水処理部門がアジアで勝つ戦略はどう考えるのか?」であった。 売上高16兆円(2012年当時)を 第1942号 令和3年5月4日(火)発行(47)超えるGEの最高責任者が、「水ビジネスの動向を直接聞きたい」、この姿勢にGEのトップリーダーのアンテナの高さと、ビジネスの強さを感じた時間でもあった。 しかし2016年、GEが世界で展開する水処理事業部の売却を公表した。なぜ売却なのか、端的に言うと「水ビジネスは、長くやると、ある程度の利益は出るが、大きな発展にはつながらない」、つまりヘルスケアのように飛躍的な発展が望めないと判断したと思われる。3 )スエズ、GEの水処理事業を買収 2017年3月、スエズはGEの水処理事業を32億ユーロ(約3870億円)で買収。 スエズは手薄だった工業用水処理事業で、エコラボ、ザイレムに次ぐ、世界第三位の座を目指すとともに、世界最大の水ビジネス企業になる方針を固めていた。 しかし、今度はスエズがヴェオリアに敵対買収されることとなった。さいごに 人口の増加、経済の発展、さらに地球温暖化の加速により世界水ビジネスを巡る状況が劇的に変化している。これらに状況に、日本企業はどう立ち向かうのか、その戦略が問われている。日本独自の戦略案を次回に示したい。
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