GWN51-96
43/102

SEWグローバル・ウォーター・ナビ 2021年4月、水メジャー最大手のヴェオリア社と同業2位スエズ社は合併することで急遽合意に達した。2020年10月にヴェオリア側から突如発表された買収(TOB)を含む合併の合意まで、少なくとも2、3年かかると予想されていたが、4月12日、両社が急遽合併に合意した。これで、スエズ経営陣を含め利害関係者が数ヵ月間続けてきた根強い反対運動に終止符が打たれ、世界最大の水ビジネス・廃棄物ビジネスの巨大企業が誕生することになった(これまでの経緯は連載第67回=令和2年12月1日発行・本紙第1932号を参照願いたい)。1.買収・合併の合意内容 合意内容は、①ヴェオリアはスエズの未保有株約70%を一株当たり20.5ユーロで取得する(昨年の提案価格は18ユーロ)。ヴェオリアのフレロ最高経営責任者(CEO)は買収に当たり、スエズの株式価値を130億ユーロ(約1兆6900億円)前後と明らかにした。 スエズグループは、従来の上下水道サービスの継続および新規事業開拓のために、②約70億ユーロ(約9100億円)規模の新会社を設立する。③ヴェオリアは、新しいスエズ新会社の長期的な発展を保■世界巨大水企業の概要1.スエズ(フランス)2.ヴェオリア(フランス)※ユーロ:123円、ポンド:150円で換算(2019年のレート)(46)第1942号 令和3年5月4日(火)発行 証する。具体的には、フランス国内での水道・廃棄物事業と、イタリア、チェコ、アフリカ、中央アジア、インド、中国、豪州などの国際的な事業はスエズの新会社の管轄とする。 ④ヴェオリアは買収終了から4年間、社会的コミットメントに同意することを約束する。両社は2021年5月14日に最終合意を締結する予定である。 では、なぜ急遽合意したのか。様々な見方があるが、昨年エンジ―(フランスに基盤を置く電気・ガス事業者で世界2位の売上高を持つ)からスエズの株式29.9%(約4200億円相当)を取得したヴェオリアが、近い将来開かれるスエズの臨時株主総会で、現スエズ経営幹部の総退陣を求める緊急動議を出すことが予想され、お互いの利益追求とスエズ経営陣の立場を守るために急遽合意に達したとみられている。 合意に達しても、売上高400億企業名水部門売り上げ水関連の従業員90,000人1億4500万人180億ユーロ(2兆2140億円)270億ユーロ180,000人9800万人/6700万人1500万人(英国内)(3兆3210億円)3.テムズウォーター(イギリス)2173百万ポンド(3260億円)6,000人ユーロ(約5兆2000億円)を超すフランスを代表する巨大企業となるがゆえに、これから複数の国や地域の競争当局の承認が必要となる。この合意により、世界最大の「上下水道事業を含めたすべての水資源サービスおよび廃棄物処理を提供」するグローバル巨大企業が誕生する。2. 過去の買収合戦で成長した世界的な企業 90年代後半は、水メジャーと言われるフランスのヴェオリア、スエズ、英国のテムズウォーターが活躍した。 2000年代に入り、「水ビジネスは儲かる事業」と見た世界的な企業による新規参入が相次いだ。例えばドイツのRWE(ドイツ第二位の大手エネルギー・電力会社)や米国のゼネラル・エレクトリック(GE)が積極的に水ビジネスに乗り出した。1 )RWE(ドイツ語読み:エル・ヴェー・エー) RWEはドイツ国内の優位性(資金力・技術力)を発揮し、中欧、イギリス、米国等で電力・ガス・水道会社の大型買収を積極的に進め、世界有数の公益事業(パブリック・ユーティリティ)会社となった。2000年時点での売り上げは630億ユーロ(約6兆9300億円)、総従業員は17万人であった。 その資金力を持って、英国の電第3種郵便物認可給水人口~ヴェオリアとスエズ合併で基本合意~世界最大の水企業誕生吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]72

元のページ  ../index.html#43

このブックを見る