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▲マラソンスイミング、トライアスロン競技が予定されている水域(出所:東京都ホームページ)▲降雨時の大腸菌群の流入防止に一定の効果が期待される水中スクリーン(出所:東京都ホームページ「2020年大会に向けた水質改善対策の実施(都と組織委員会が共同実施)」)第3種郵便物認可 五輪・パラの開催時期に水質検査をしたところ、大腸菌数などで各競技団体の示す基準値をオーバーする日が検査日の半数以上になった。トライアスロン(五輪・パラ)の開催時期では26日間調査で20日、マラソンスイミング(五輪)の開催時期では21日間調査で11日が基準値を超えた。今回(8月17日)、パラトライアスロン・ワールドカップでスイムが中止になったのは、ITUが定める基準値を大幅に上回る大腸菌が検出されたためで、競技は2種(ランとバイク)に変更された。2)水温も問題 水温はマラソンスイミングが31℃以下、トライアスロンが32℃未満を基準値としている。8月11日のテストイベントでは、朝5時の水温が29.9℃で競技途中での水温の発表はなかったが、太陽光が降り注ぐ会場で当然海水温は31℃に達していたと思われる。大腸菌群の流入を防ぐ3重水中カーテンで仮に仕切られた場合、太陽光で温泉風呂になる可能性が高く、水温上昇にも留意が必要である。4.今後の汚染防止対策は お台場は本来、遊泳禁止区域であったが2014年都条例を変えて「国際スポーツ競技は除く」と特例を認めた。本来国際競技にふさわしくない場所での開催であるが、東京2020競技連盟では場所変更の可能性はないとしている。では現状のお台場の水質改善はどうしたらよいのか。▲お台場の大腸菌数(出所:「お台場における大腸菌数の鉛直分布把握の試み」和波一夫、石井裕一、安藤晴夫、木瀬晴美/東京都環境科学研究所年報、34-35(2015)」 第1901号 令和元年9月10日(火)発行(43) まず、①底質のヘドロ(厚さ2m)の除去で臭いの元となっている嫌気性菌(硫化水素生成菌、メタン菌)を除き、白いサンゴ砂と鉄鋼スラグを混合散布し、色度低減、溶存酸素量の増加を行うべきである。さらに現在、世界で注目されている「安斉管鉄製の超微細式ナノバブル発生装置」で好気性にすること。②水中カーテンの拡充。現在計画されている3重の水中スクリーンの水中での長さを5m以上にする(現在3mだが、潮の干満の差が1mある)。③隣接する有明水再生センター(施設能力:3万m3/日最大)の処理水(淡水)の放流口を、現在の運河からお台場公園に変える、などである。 あと出来ることは来年、五輪開催期間中に大雨が降らないことを祈ることしかない。さいごに 開催まで1年を切って「時間がない、お金がない」状態の中で出来る可能性のある対策を列挙したが、あとはオリンピック委員会や国、都がトップの英断をもって水質改善に取り組むべきであろう。このままでは「東京2020・大腸菌に負けたトライアスロン」と世界に拡散されるであろう。

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