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SEW1.セゴビアの水道橋 セゴビアは標高1000mの台地に位置する古代ローマ時代からの要塞都市である。この要塞に水を導く水道橋は、14km先のプエンテ・アルタ水源から3%の勾配で、毎秒20L(約1800m3/日)の飲料水を2000年にわたり供給してきた。水道橋の入り口には石作りの小屋があり、そこには沈砂を目的とした枡があり、毎日掃除と点検ができるようにバイパス水路と角落しが設けられている、水インフラ・システムは維持管理が命である。この水道橋を通った水は、城内に入ると地下の樋に入り、浴場、公衆便所、家事などに使われ、最後は城内の緑を育み、谷に排水される。広場にある噴水は、見て楽しグローバル・ウォーター・ナビ 昨年は世界中で、水環境に関する国際会議や展示会がコロナ感染の影響で、ほとんどが中止または延期となった。毎年10回以上、海外の水会議や国連機関の会議などに出席し、活きた情報を集めてきた現場取材主義の筆者にとり、苦難の一年であった。しかし巣ごもりしながら、昔の訪問先を見直してみると、新しい発見がある場合が多い。 2008年8月下旬、スペインのサラゴサで開催された「水の万博」の帰路に、ローマ時代に建設されたセゴビアの水道橋を訪れた。旧市街の玄関にあたるアソゲホ広場に立ち、天を仰ぎ見ると、全長958m、高さ28m、166のアーチが私を圧倒した。▲スペイン・セゴビア ローマ時代の水道橋(筆者撮影)▲筆者は2008年8月に水道橋を訪れた(30)第1935号 令和3年1月26日(火)発行 むだけのものではない。水源の監視モニターであり、噴水は常に圧力を保つ調整弁であり、また大量の水を滞留させない工夫であろう。「水は貯めると腐る、常に流し続けろ」まさに先人の知恵である。2.水インフラ無くして帝国の繁栄無し(ローマ水道の基本理念) 2000年も前に、なぜこの様な巨大建造物(水道橋)を作り、水インフラの整備をしたのか、その鍵はBC312年のローマ帝国に遡る。 当時のローマ帝国の財務官アッピウスは「ローマ帝国の永続的な発展は、道路整備と水インフラ整備である」と行政上の権限を持つ執政官を説き伏せた。 “すべての道はローマに通ず”とローマ街道の整備は、万人が知ることであるが、街道整備と同時に行われた水インフラ(上下水道の整備)はあまり知られていない。 いつの時代でも後世に残る偉業を提案した時には、反対がつきものである。アッピウスが街道の整備「出来るだけ直線にして、広い石畳にする」を提案した時には「ローマ軍が攻めやすくなるが、一方敵もローマに攻め易くなる。今第3種郵便物認可維持管理の手抜きがローマ帝国を崩壊させたスペイン・セゴビアの水道橋吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]68

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