SEWオリア、スエズ社の現状3つの事業分野におけるソリューションを設計・施工および維持管理ビジネスで提供。水分野では世界9800万人に水道サービス、6700万人に下水処理サービスを行っている。従業員は世界で18万人、総営業結果(EBITDA)の売上高は270億ユーロ(約3兆3210億円)、利益は40億ユーロ(約4920億円)である。2)スエズ スエズは水道事業や電力事業、ガス事業を行っている。その歴史はリヨン水道会社とスエズ運河会社が合併し誕生、2006年フランスガス公社(GDF)と合併声明、2008年の合併後にはGDFスエズ(現:エンジ―)と水道事業を担うスエズ・エンバイロンメントに分割された。スエズは、水道事業では世界1億4500万人に配水し世界的なリーダーである。 従業員は8万9千人、売上高は180億ユーロ(約2兆2140億円)、利益は30億ユーロ(約3690億円)である。3)エンジー社の動き フランスに基盤を置く電気・ガス事業者(主要株主はフランス政府で36%保有)で、世界70ヵ国に拠点を持ち、従業員は約15万人、売上高は606億ユーロ(約7兆5千億円、2018年)。電力・ガス供給で世界第2位の売上高を持つ。前述のように2008年フランスガス公社(GDF)とスエズの合併によりGDFスエズの社名で成立し、2015年にエンジ―と社名変更している。スエズ株を35%所有し、このうち29.9%をヴェオリアに売却している。なぜ売却を決めたのか。同社は2016年から「脱炭素」「デジタル化」「分権化」を軸に事業改革を行っており、再生可能エネルグローバル・ウォーター・ナビ フランス企業ヴェオリア・エンバイロンメントは、同国のスエズ・グループを113億ユーロ(約1兆3900億円)で公開買い付けにより完全買収すると宣言した。既にその第一歩としてフランスの多国籍電力会社エンジー社からスエズ株式29.9%を34億ユーロ(約4200億円)で10月5日に取得している。 仮にスエズ・グループの完全買収に成功すれば、ヴェオリア社は世界最大の水ビジネス企業となり、売上規模は410億ユーロ(約5兆円)を超えるものとみられている。なぜ完全買収なのか。 ヴェオリア社の会長兼CEOアントワーヌ・フレロは声明の中で「天然資源の枯渇と気候変動の状態を考えると水環境改善の緊急性は、これまで以上に強くなっている。我々の動き(世界的なチャンピオンを目指す)は世論、欧州グリーンディール、さらに多くの国から必要とされている」、さらに「スエズとヴェオリアの非常に堅実なスキルを組み合わせることで、世界的な競争激化に直面しても、新事業の開発を大幅に加速し、フランス、欧州、世界の産業が抱える21世紀の環境課題解決に対応できる」と述べている。 100年以上ライバルとして戦ってきたスエズは、ヴェオリアの闇(34)第1932号 令和2年12月1日(火)発行 討ち的なアプローチに対し当然、猛反発。10月6日のプレスリリースで「ヴェオリアによる買収は敵対的であり、我々は従業員、顧客、すべてのステークホルダーの権利と利益を守るために、買収や事実上の支配を避けるために最大限の努力を果たす」と宣言している。フランス国内でも意見が二分している。ジャン・カステックス首相は「いかなる提案も雇用を維持し、水と廃棄物の独占を避けるべきだ」、またブルーノ・ル・メール経済・財務・復興大臣は「両社に落ち着いてスエズの支配に関する解決策を見つけるように要請」、さらに「2つの美しいフランス企業間の争いを、世界に提供することは止めよう」とテレビを通じ助言している。フランス国内のみならず、世界中が、この敵対買収劇に注目している。1.水メジャーと呼ばれるヴェ 過去の3大水メジャー(ヴェオリア、スエズ、テムズウォーター)からテムズが脱落し、現在はヴェオリア・スエズの2強状態になっている。両社の概要を見てみよう。1)ヴェオリア 水、廃棄物、エネルギー管理の第3種郵便物認可世界最大の水ビジネス企業誕生か?ヴェオリア、スエズを敵対買収吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]67
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