▲前列右:筆者、前列中央:故中川昭一元財務・金融担当大臣。平成20年9月30日、財務大臣室で▲左から筆者、中川郁子衆議院議員(当時)、菅義偉官房長官(同)、竹村公太郎日本水フォーラム事務局長◀平成25年11月28日、総理官邸で菅官房長官(右)と面談し、「水の安全保障」について説明▲中川議員(右)と筆者第3種郵便物認可 産省(農業用)の900のダムはこれまで洪水対策に使われていなかった。昨年の台風19号をきっかけとして、縦割り行政の弊害を排除して、こうしたダムの水量を洪水対策に活用できるように見直しを行った。現在、全国の約100の国が管理する一級水系について調整を終えた。〈中略〉今後は全国で約350の都道府県の管理の二級水系にあるダムについても同様の見直しを進める」と述べている。 筆者は平成25年11月28日、「水の安全保障」について総理官邸で菅官房長官と面談した。「水問題解決は国の根幹である」と主張し、省庁の縦割り弊害の打破を目指した故中川昭一元財務・金融担当大臣の意思を受け継いだ、中川郁子衆議院議員(当時)に同行したものである。多忙にも関わらず菅長官は説明資料に深く目を通し「国として水行政の姿はどうあるべきか!」と、鋭い質問を受けたことを鮮明に記憶している。5.財務大臣より“水大臣”をやりたい……故中川昭一元財務・金融担当大臣 筆者の触れ合った国会議員の中で、最も水問題に傾注したのは、中川昭一議員である。「水は生命の源であり、その水が地球規模で危機に直面している。政治家として看過できない」とし具体的な行動として特命委員会「水の安全保障研究会」を設置(平成19年12月)。研究会は特別顧問:森喜朗元総理、会長:中川昭一、事務局長:竹下亘、幹事役:井上信治(現・内閣府特命担当大臣)、岸信夫(現・防衛大臣)、岡本芳郎、菅原一秀、福井照、盛山正仁、山内康一の各議員という布陣で50回以上の会合を開催。研究会には関係省庁や民間企業、専門家、NGO/NPO団体などが幅広く呼ばれ、成果は水の安全保障研究会最終報告書(669頁)にまとめられた。 中川議員が財務・金融担当大臣に就任した際、挨拶に伺ったときに「私は財務大臣より水大臣をやりたい」、この言葉に、水問題に対する執念と執着心を感じた。 しかし中川議員が目標としてい 第1928号 令和2年10月6日(火)発行(43)た「縦割りの弊害を打破し、水資源省や水資源庁の設置」まで踏み込めず、道半ばにてご逝去(享年56歳)された。ぜひ新政権には、水問題担当大臣を要望したい。さいごに……持続可能な総合流域治水政策に期待 水に関する法律は約30本以上あり、水道は厚労省、河川と下水道は国交省、工業用水は経産省、し尿とごみ処理、環境規制は環境省、農業用水と農村集落排水事業は農水省と多岐に亘っている。人口減少化における水行政の在り方は、省庁の壁を超える横断的な対策が急務である。その一つとして総合的な流域治水は極めて重要であり、菅新政権には⾷糧の安全保障、地方創生(雇用と新産業創出)、環境保全などを含む「省庁の縦割りを排除し、国民の命を守る総合流域治水政策」に期待したい。
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