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SEW田だ貝洪水氾濫区域に存在3.国民の命を守る上下水道インフラも危ない 全国の主要浄水場(3521ヵ所)の37%に自家発電設備がなく、578ヵ所(全体の22%)の浄水場は浸水想定区域に存在し、その7割は防水扉や電気設備への耐水対策がとられていない(平成30年厚生労働省調べ)。 最近の事例では、雨台風と言われた台風19号(令和元年10月)では、福島、茨城など3県6市町の浄水場10ヵ所が浸水し、最大16万3243戸が断水被害を受けた。 また内水氾濫を防ぐ役目を果たす下水処理場も危ない。全国の下水処理場(約2200ヵ所)のうち約5割、下水や雨水を送るポンプ場の約7割は浸水想定区域に建設されている。国土交通省の指針では、早急に浸水対策を進めるようになっているが、浸水想定区域に立地している施設のうち、耐水化や浸入水を排除する「揚水機能が確保」されている施設は、処理場が40%、ポンプ場は45%にとどまっている(令和元年国土交通省調べ)。4.既存ダムの洪水調節機能の強化……縦割り行政の弊害打破 現在、全国で稼働しているダムは1460ヵ所で、約180億m3の有効貯水容量を有しているが、洪水調節のための貯水能力は、約3割(54億m3)にとどまっている。なぜ、3割しか活用されてこなかったのか。菅官房長官(当時)は今年8月に利根川水系の須すダムを視察し、その後の会見で「全国には国土交通省所管の570の洪水を防ぐための多目的ダムがあるが、経済産業省(発電用ダム)や農林水グローバル・ウォーター・ナビ 世界中で異常気象による自然災害が頻発している。水に関して言えば干ばつと洪水被害である。日本も無縁ではない、令和元年の台風19号では大河川71水系で142ヵ所が破堤(堤防が決壊)している。その対策として国土交通省は「流域治水」をスローガンにダムを含む上流、中流、下流ごとに洪水対策や都市部での浸水対策を打ち出している。ダムは洪水対策の目玉であるが、最近、大洪水被害をもたらす線状降水帯(同じ場所に停滞し大雨を降らす)はダムの下流側でも頻発している。これからは省庁を超えた総合的な流域治水が急務である。 各省庁は人口増と経済の発展に比例し、その予算や権限を自己増殖させ、安全な国土造りを推進してきた。しかし人口減少、公共予算の縮減に直面し、国全体での「新しき国の在り方」が求められている。菅新政権には、省庁の縦割りの弊害を排した、持続可能な総合流域治水を期待したい。1.川が造った日本列島 日本列島の脊梁山脈を削り平地などを造ってきたのが川である。川と言えば国が定めた一級河川や二級河川、準用河川(市町村が管轄)が知られているが、毛細血管(42)第1928号 令和2年10月6日(火)発行 のような普通河川を含め、日本には3万5千本を超える河川が存在し、その川は、日夜たゆまなく日本列島を削り様々な地形を造っている。2.国民資産・財産の75%は  平野の中でも河川水位より低い地盤の所は「洪水氾濫区域」に指定されている。問題は、その「洪水氾濫区域」は国土面積の約1割しかないのに、国民の半数が居住し、資産・財産の75%が集中していることである。また、平成7年からの20年間で浸水想定区域内の世帯は300万増えて1530万世帯になった。では「人口が減少しているのに、なぜ世帯数が増えるのか」、その理由は核家族世帯が増えたことにある。旧市街地では地価が高く、大規模開発が難しいが、浸水想定区域は平地で比較的地価が安く、手ごろな値段で住宅を購入することができた。半面、これらの土地は自然災害のリスクが高く、いったん洪水災害にあうと、その復旧に多額のコストと時間がかかるのである。氾濫地域に存在する上下水道施設や民間工場もしかりである。いまや洪水対策はすべての国民に対する安全保障である。第3種郵便物認可がい菅新政権に期待する、持続可能な総合治水対策吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]65

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