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フランスの感染・死亡者数(出所:フランス保健省/4月20日)Q4:上下水道に従事するワーカーのコロナ対策はどうすべきか?A4:生下水からコロナウイルスは、微量だが検出されている。特段の防護服等は必要がないが、感染の危険性はあるので、出来る限り生下水に触れない、飛沫に触れないようにすべきである。OSHA(米国労働安全局)指針に基づきワーカーの安全衛生管理を徹底すべきである。3) 下水中のコロナウイルスの 検出で感染者数を把握 マサチューセッツ工科大学(MIT)出身のベンチャー企業Biobot Analytics社は、下水中の微量コロナウイルスの検出で、感染者数を把握する新技術(抗原抗体反応によるDNA分析法)を開発している。まだテスト段階だが、4月15日の感染地の水質サンプル分析では最大限3%の住民がコロナ感染している可能性があることが示された。これは実際にPCR検査を受け陽性と判断された患者数の約15倍に相当する。この技術により過去の感染者数(症状の出ない陽性患者)の正確な把握や、今後起こりうる第二波感染の事前傾向が掴めるとしている。Biobot社はMIT、ハーバード大学と組み、AIを活用したウイルスの拡散予想プログラムを構築しており、さらにデータを集め確実性を上げることを目指している。共同創業者のマリアナ・マトゥス女史は「汚水という未活用の情報リソースを活用し、世界規模の疫病に歯止めをかけることが出来る」と、また共同創業者のニューシャ・ガエリ女史は「汚水は情報の宝箱」と語っている。2.フランスのCOVID-19  感染状況 フランスの感染者は16万1665人、死亡者は2万2856人に達している(4月27日)。感染者の増加ペースは鈍化しているが、同国のオリヴィエ・ヴェラン保健相は、死亡者の27%が出ている高齢者施設を重点的に点検する「大がかりな取り組みを開始する」と表明し、また「感染拡大の終わりには至っていない」「外出せず、コロナ封じ込めの努力を続けるべき」と警告を発している。1) パリ市の雑用水道からCOVID-19検出される パリ市で道路掃除や公園の噴水などに使われる雑用水道から、微量のCOVID-19が検出された。パリ市は市内27ヵ所で雑用水道の水質検査を行った結果、4ヵ所で微量のコロナウイルスが検出されたと4月19日に発表。感染者の排泄物が下水として川に流れ、その後に取水したのが原因とみられている。 雑用水はセーヌ川やウルク運河を水源とし、夾雑物は沈殿処理されるものの、殺菌はされていない。当局は、雑用水は飲料水とは完全に分離された別の配管網で供給されているので「問題はない」としている。ただし道路散水で空気中に拡がる恐れがあることから当面雑用水の使用を見送ることを決めている。現在すべての市内の公園は閉鎖されている。2) コロナ感染、下水分析から 早期警戒システムの開発 フランスの科学者は、感染が拡大するパリ市の生下水を1ヵ月以上、水質サンプリングし、微量コロナウイルスの消長を分析・データ化し早期警戒システムの開発に乗り出した。詳細は明らかにされていないが、パリ市水道局のウイルス研究者セバスチアン・ワルター氏はこのシステムにより隠れた感染者数の把握や、第二波の感染拡大の予兆が得られるとしている。さいごに COVID-19の世界的な感染爆発は、見えない敵と戦う第三次世界大戦とも呼ばれている。古来、戦争と科学技術の進歩速度は深く結びついていた。見えざる敵と戦う公衆衛生の研究や技術が、これを機に加速度的に進むことを期待している。第3種郵便物認可 第1917号 令和2年5月5日(火)発行(43)

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