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SEWグローバル・ウォーター・ナビ 新型コロナウイルスによる感染国は183ヵ国、感染者は世界で64万人を超え、死者数は3万人を超えた(グリニッジ標準時3月28日19時、WHO発表)。一方、少なくとも13万人が回復している。昨年12月に最初に新型コロナウイルスが発生した中国では、本土の感染者は8万1394人で、うち3295人が死亡。2月に新型コロナウイルスによる初の死者が出たイタリアの死者数は1万0023人、感染者は9万2472人。3番目に被害が大きな国はスペインで、感染者は7万2248人、死者は5690人となり、さらにパンデミックの様相を強めている。最初は傍観していた米国では、西海岸から始まった新型コロナウイルスが全土に広がり、3月27日現在で感染者数は11万人を超えた。同月23日現在で、全米の感染者は4万1511人だったので、短期間で加速度的に感染者が増加し、同月26日に中国を上回って世界最多となり歯止めがかからない状態に突入した。トランプ大統領は同月27日、民間企業に国家重要物資の優先的な生産を要求できる「国防生産法」に基づき米自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)に対し、重症患者に必要な人工呼吸器の製造(100日以内に10万台)を命じた。 では世界と米国における水イン(42)第1915号 令和2年4月7日(火)発行 フラ(上下水道)に関する新型コロナ対策への指針はどうなっているのか、調べてみた。1.世界保健機関(WHO) 3月初めにWHOは新型コロナウイルス(国際名称COVID-19)が上下水道を含むサニテーション(衛生)に及ぼす影響とその対策に言及した。◦ COVID-19が上下水道に影響を及ぼす証拠は、今のところ存在しない……ウイルス膜は弱く環境中のオキシダントや塩素で簡単に破壊される。水道施設においても伝統的な水処理の方法で、殺菌工程が規定通りに守られていれば微生物学的汚染源(菌類、原生生物やウイルス)は不活性化する。家庭においても煮沸、UV照射、精密ろ過膜やナノ膜で完全除去できる。また技術部門の責任者は、COVID - 19は過去のSARSとは異なり、上下水道からの感染のリスクは少ないと述べている。◦ 今のところ、世界各国から下水道施設、および生下水からのCOVID-19感染の報告はない※。◦ 上下水道施設の運転管理に従事する人は、アルコールベースの消毒薬と石鹸と併用し、40~60秒間手洗いをするか、または塩素水(0.05%)での手洗い励行※ 下水中のウイルスの挙動、当然予想されていたことだが、WHOの発表後、3月24日オランダ国立公衆衛生研究所(RIVM)は、スキポール空港や感染者の居住する地区の下水中からCOVID-19を検出したと報告している。のこと。◦ COVID-19の寿命について、最近のレビューでは2時間から9日間の報告もあるが、周囲の環境(材質、温度、湿度など)によって大きく異なっている。いずれにしても通常の殺菌剤(70%エタノール、塩素剤)で1分以内に不活性化する。◦ 下水処理場や、し尿処理を扱う施設の従業員や、排水関係のパイプ修理に従事する人は個人用の防護服や保護機器を着用すべきである。防護服、密閉できる手袋、ゴーグル、マスク、顔面保護具、ブーツなどで身体を保護し、それらを使用後、塩素殺菌後漏れない袋に入れ廃棄すること。仮に再使用する場合は、洗濯機に60-90℃の温水と洗浄剤を入れ洗浄、清水ですすいだあとは、日光による乾燥が望ましい。また使用したドラム型洗濯機は、再汚染を防ぐため、0.05%の塩素水で30分間洗浄することを推奨する。2.米国疾病予防管理センター(CDC) CDCは2月に「水道施設、および水道水からCOVID-19は、検出されていない」、また現在のところ、SARS(重症急性呼吸器症候群)や中東で蔓延したMERS(中東呼吸器症候群)のような糞便から経口的な感染は報告されていないと発表している。しかし2003年SARSが蔓延した時には、生下水から同様のコロナウイルスが検出第3種郵便物認可新型コロナウイルスに対する水インフラ対策吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]59

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