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SEWグローバル・ウォーター・ナビ 中国・武漢発コロナウイルスの蔓延により、世界各地で大混乱が引き起こされている。2月28日時点での中国・国家衛生健康委員会の発表によると、感染者は8万2000人を超え、中国での死者数は2800人、さらに感染が最も深刻な湖北省では入院中の患者が4万1000人以上で、そのうち2500人近くが重体になっている。ただし感染者の数の発表をめぐっては、診断基準の見直しが行われ、中央政府や湖北省の保健当局は、統計数字を相次いで訂正し、どれが本当の数値なのか、世界中から疑問が呈されている。習近平指導部は21日の重要会議で「対策の効果は現れてきているが、まだ転換点には来ておらず、湖北省の状況は依然、厳しく複雑だ」という認識を示している。1.武漢コロナウイルスによる中国の下水道事業への影響 武漢コロナウイルス蔓延により中国の下水道事業は、未だかつてない体験に迫られている。その第1波は下水道プロジェクト入札の延期や中止、第2波は下水道事業経営への影響である。1 )多くの入札案件が延期または中止に直面 新型コロナウイルスの影響で環(46)第1913号 令和2年3月10日(火)発行 ▲新型コロナウイルス模式図(出所:istock.com/Dr_Microbe)境保護市場における「入札案件」の多くは延期、または中止に追い込まれている。既に受注している案件も大きな打撃を受けている。環境保護企業、特に地方で活躍する企業の大部分は、中小零細企業で、資金リスクに対する抵抗力は脆弱であり、資金内部留保の意識が欠如している。サービス提供先は、主に地方政府か工業開発企業であるため、今回のような突発的な疫病の影響を受けるとプロジェクトは停滞し、決算が出来ず、従業員の給料やオフィス費用も支払えない状態に陥っている。仮に疫病が数ヵ月後に収束しても、暫くは資材不足による調達コストの増大、人材不足(地方から工員が戻らず)が待ち構えている。他業種の企業と同様に疫病が収まり通常業務に復帰しても、物流不足、さらに価格上昇問題に直面し、今後の業績に重大な影響を及ぼすだろう。2 )下水流入量の減少による使用料金収入の減少 雲南水務(水道会社)によると新型コロナ感染症対策により、市民生活や企業活動における水道使用量、汚水排水量、個体廃棄物の排出量など全てが減少している。また中環水務は「企業からの排水量の減少が顕著になる」可能性を指摘している。現在、同社の扱う排水処理量は、往年同期に比べて、すでに12%減少している。春節後の休暇延長、重点工業企業の生産開始遅れや工員復帰の延期による排水量の更なる減少は資金調達や業績に直接的な影響を与えている。3)処理費支払いへの影響 中国の汚水処理費の収支は、各地方政府が顧客より汚水処理費を徴収し、財政収入としてきた。地方政府は汚水処理サービス企業とサービス支払い契約を交わし、財政より支出している。今のところ、汚水処理サービス企業への支払いに目立った影響は及んでいないが、これからの経済不況で、行政区域内の零細企業、中小企業の存続に対し、地方政府は財政支援を表明しているが、その原資が不足している状況に直面している。現に、北京や陝西省、湖北省、海南省、深圳等の地区では、零細企業と中小企業向けの汚水処理費の減免を決定している。この措置で、例え第3種郵便物認可新型コロナウイルスによる中国・下水道事業への影響吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]58

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