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SEWグローバル・ウォーター・ナビ スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF)が1月24日、4日間の日程を終えて閉幕した。主要テーマの気候変動問題では、米国トランプ大統領と各国要人や環境活動家との意見の食い違いが鮮明になり世界中のメディアが取り上げた。WEFが開幕前に公表した「グローバルリスク報告書」では、今後10年に起こりうる地球規模のリスクの上位5位まで、すべて環境に関わる項目であった。他の大きな話題は、資本主義の在り方で「米国が反対するデジタル課税の導入」であり、これは米国(自国第一主義)と欧州勢(多国間主義)の鍔つばぜり合いであった。では今後起こりうる「グローバルリスク」を具体的(長期、短期)に見てみよう。1.グローバルリスク報告書……長期リスク 長期のリスクとして、今後10年間で発生する可能性のあるグローバルリスクと、そのリスクが発生した場合の影響度について報告されている。1) グローバルリスク発生の可能性項目① 財産やインフラの喪失……異常気象(洪水、暴風など)の頻発② 国や企業による気候変動緩和・適応策の失敗③ 大規模な自然災害(地震、津波、大きい上位5位はせの上位5位は(36)第1911号 令和2年2月11日(火)発行 火山爆発、地磁気嵐など)の発生④ 地上または海洋における大規模な生物多様性の喪失と生態系の崩壊⑤ 原油流失や放射能汚染など人為的な環境犯罪、損害・災害など このように、すべて環境関連であった。2) リスク発生した際の影響度が① 気候変動の緩和策・適応策の失敗②大量破壊兵器③ 大規模な生物多様性の喪失と生態系の崩壊④異常気象(洪水、暴風など)⑤ 水危機(人間の健康や経済活動に有害な影響をもたらす水の量的、あるいは質的な利用可能性の重大な減少を示す) これまた、②を除けばすべて環境関連である。またグローバルリスクは個々で収束するものではなく、他のリスクと相互関連し、さらにリスクを加速・増大させる可能性も示されている。3) 関連性の強いリスク組み合わ① 異常気象+気候変動の緩和・適応の失敗② 大規模なサイバー攻撃+重要な情報インフラとネットワークの故障③ 高水準の構造的失業または不完全雇用+テクノロジーの進歩がもたらす悪影響▲グローバルリスク報告書2020 (出所:世界経済フォーラムHP)④ 大規模な生物多様性の喪失と生態系の崩壊+気候変動の緩和・適応策の失敗⑤食料危機+異常気象2.グローバルリスク報告書……短期リスク 2020年代に増大する短期リスクの上位5位は次の通り。①経済対立(78.5%)②国内政治の二極化(78.4%)③異常熱波(77.1%)④自然生態系の崩壊(76.2%)⑤ インフラ分野へのサイバー攻撃(76.1%) 短期リスクは地政学的な混乱と多国間協調主義の交代が、グローバル危機を増大させていると指摘している。3.グローバルリスクを若年層(1980年以降に生まれた人)はどう見ているか 若年層の人々は、短期・長期のいずれの展望についても「環境リスク」をどの年代より高い位置付けにしている。90%近い人たちが「異常熱波」「生物多様性の喪失」と「人為的な汚染による健康被害」が2020年には、さらに悪化すると回答しており、2030年までに環境第3種郵便物認可ダボス会議の主題は環境問題吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]57

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