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を▲アフガニスタン 深井戸によるヒ素汚染地図(出所:ユニセフ資料)第3種郵便物認可 金を提供し灌漑事業をサポートしている。3)中村語録 用水路を建設していた時の彼の言葉に感動を覚える。◦武器ではなく、命の水を◦ 争う時間はない、パンと水問題解決を急げ◦ 生きておれ、病は後で治す、まず井戸を掘れ◦ 100の診療所より1本の用水路◦医療より水だ◦ 治療の前に水と緑の大地をよみがえらせたい◦水さえあれば生きられる 中村医師は「食べるために若者は傭兵(ようへい)となって武装勢力に入ってしまう。用水路を建設し、農業がしっかりできれば、それが防げる」と強い意志で活動を続けていた。世界的に知られていた中村医師に深い哀悼の意を表したい。アフガン国民の約8割が農民であり、水資源さえあれば農業が可能になる。タリバンが活動しているのは、ほとんどが干上がった干ばつ地帯であり、水資源の確保が国の運命を握っていると言えよう。2.アフガンの水環境問題 国土面積は日本の約1.7倍の65万km2、人口は約3550万人(2017年推計)の多民族国家である。内陸国のアフガンは昔から豊富な水資源に恵まれていた。背後にそびえるヒンドゥークシュ山脈(最高峰7708m)の氷河から供給される雪解け水が川や地下水となって大地を潤し、この地域は農業の中心地としての歴史を持っていた。しかし状況は一変した。 報道されているように内戦が40年間続きあらゆる井戸や用水路が破壊・放置されたのは承知のことである。このためアフガン国内に留まる雪解け水はわずか30%くらいに減少したと言われている。さらに自然現象では地球温暖化の影響で氷河の減少や高温・少雨で干ばつが激化している。とりわけ北部および西部アフガンが厳しい影響を受け、バルクやヘラートなどでは灌漑用水が枯れたために農業が壊滅的な被害を受けている。川の水(表流水)が欠乏すると頼れるのは地下水である。首都のカブール(人口推計600万人)では市民の8割が飲料水を得難い状況に陥っている。多くの市民は井戸の所有者から水を買うしかない。 ここ数年間でカブールの地下水位は急速に低下している。さらに深井戸からはヒ素が高濃度で検出されている所も増えている。米国地質調査所によるとカブールの地下水位は2004年から8年間で10~20m低下、最近では60mまで地下水位が減少したとの報告も出ている。カブールでは個人所有の揚水ポンプの規制が緩く、違法井戸を含め21万本の井戸が生活を支えて第1909号 令和2年1月14日(火)発行(39)いる。そのために首都の地下水は今後10年間にすべて干上がってしまう恐れがあるとカブール当局が警告している。地下水の汚染も激しい。80%の地下水が家畜や住民の糞尿による大腸菌やウイルス、産業廃水による汚染に直面している。3.日本政府のアフガン貢献 2001年のタリバン政権崩壊後以降、日本政府は同国の復興・国づくりに、2010年から2014年の間、ODA無償資金協力で約4617億円(うち灌漑・農業関係約60億円)、技術協力で523億円を支援し、その後も積極的に支援している。 このように日本はアフガンの復興に大きく貢献しているが、国際的にはほとんど注目されていない。外務省のPR不足である。アフガンへのドナー国の順位は1位米国、2位日本、3位ドイツ、4位英国、5位スウェーデンであるが、日本を除く他国は、国際会議等でアフガンへの貢献策を誇大にPRしている。ODA資金は、日本国民の税金であり、外務省はもっと国際的に日本の貢献をPRすべきである。

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