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「PFOS及びPFOAに関する対応の手引き」の概要(環境省資料から本紙が抜粋・作成)第3種郵便物認可 ――が重大な影響として特定されたからである。 米国環境保護局(EPA)は2023年3月、PFOS/PFOAの基準値を各4ナノグラム/Lと厳しくする案を公表し、年内に最終決定する予定である。基準値がこのまま決定された場合、公共飲料水に対する化学物質のモニタリングが義務付けられる。仮にPFOS/PFOAが基準値を超えた場合、一般市民に通知し、汚染を低減する措置が水道事業者に義務付けられる予定である。EPAは、この基準値(4ナノグラム)の採用により、PFOS/PFOA類による数千人の死亡と、数万人の重篤な疾病を減らせると想定している。この基準案は2023年末までに最終決定される予定となっている。バイデン政権は、規制強化と同時に自治体がPFOS/PFOAの削減対策を実施する際の財政支援として5年間で50億ドルの予算を手当済みである。(引用先原文はBiden-Harris Administration Progress on Per-and Polyfluoroalkyl Substance, March 2023)2)日本の基準値 日本では、PFOSについては前述の「ストックホルム条約」により、化学物質の審査および製造等の規制に関する法律(化審法)で平成22年4月以降は特定の用途を除き、製造・輸入・使用等が禁止された。基準値としてWHOより厳しい50ナノグラム/Lを国の暫定基準値に採用していたが、さらに各国の動向をみて、厳しい基準値の設定を検討している。3.PFOS/PFOAの浄水処理方法 厚生労働省は水道水の水質管理目標の設定項目と目標値に、PFOSとPFOAの和として50ナノグラム/Lを追加し、2020年4月から施行した。全国の浄水場で50ナノグラム/Lを超過した浄水場は無かったが、東京都の5ヵ所の浄水場では10~30ナノグラム/Lの範囲で検出され、地下水を原水とする都市部の浄水場で高い濃度が報告された。1)処理方式 原水に含まれるPFOS/PFOAの濃度を低減させる処理方式には、活性炭や膜分離(RO膜、NF膜)が使われるが、それぞれの方法にメリット・デメリットが存在する。PFOS/PFOA類は、先に述べたように「永遠の化学物質」であり、分解処理は通常の処理では不可能であり、除去することは、単に濃縮することを意味している。① 膜処理では、原水中には他の物質も多く、その前処理に時間と経費が掛かり、さらに廃液には高濃度のPFOS/PFOAが残留する。② 活性炭が一般的に多く使われているが、共存する有機物が多い場合は、活性炭がすぐに飽和してしまい、PFOS/PFOAなど 第1995号 令和5年6月13日(火)発行(43)は、吸着されずに通過してしまう。仮に全て吸着しても、最終処分に課題が残る。③ イオン交換樹脂も、有効な処理方法であるが、膜処理以上に課題が残る。④ 最近では、亜臨界水処理も検討されている。さいごに 米国では、ろ過器+活性炭吸着+イオン交換樹脂を使い完全除去し、最後の樹脂は焼却処理している。PFOS/PFOA類は熱分解され、最後に二酸化炭素とフッ化物イオンとなり、フッ化物イオンは、既存の処理方法であるフッ化カルシウムとして無害化される。半導体関連の水処理では、この方式は有効な処理方法であるが、市民向け水道事業では到底、無理なプロセスである。また、新しき汚染源とし、最終処分地の浸出水も大きな問題として取り上げられている。今までに使用されたPFOS/PFOA製品が埋め立てられ、その浸出水から高い濃度が検出されている。まさに「永遠の化学物質」の所以(ゆえん)である。

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