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SEW■令和元年度PFOS及びPFOA全国存在状況把握調査結果(環境省) トップ10地点を筆者抜粋(単位ng/L)グローバル・ウォーター・ナビ有機フッ素化合物PFOS/PFOAの 有機フッ素化合物類、特にPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)は化学的に極めて安定で、水や油をはじく性質を持つことから「焦げ付かないフライパンや調理器具」として庶民に知られている。工業用に大量に使われているのが泡消火剤で、少量でも短時間で消火できる「最強の消火剤」とされ、また最近では半導体製造にも多く使用されている。 1998年、米国のEPA(環境保護局)は、「発がん性の疑い有り」として世界で最初のアラートを発した。その後EPAはアクションプランを発表し、州レベルで規制強化、モニタリングの強化を打ち出した。さらにストックホルム条約(長期間にわたり環境中に残存する化学物質を規制する条約)締約国会議は2009年、PFOSの製造や使用、輸入の制限を決定し、2019年には物質そのものの利用を原則禁止することを決定した。日本国内では環境省による全国調査の結果、在日米軍基地周辺や工業地帯の地下水からPFOS/PFOAが検出され大きな話題となり、国は規制強化の方針を打ち出している。1.国内PFOS/PFOAによる地下水の汚染調査(42)第1995号 令和5年6月13日(火)発行  有機フッ素化合物は、4700種類以上存在しており、その代表例がPFOS(俗称ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)である。両物質とも、自然環境中で分解されにくく蓄積しやすい性質から「永遠の化学物質」とも呼ばれている。過去の研究では、発がん性や胎児の低体重化、成人の生殖機能への悪影響、肥満、甲状腺の疾患などの健康リスクが報告されている。1)地下水汚染調査 環境省が令和2年6月に公表した、全国171地点での地下水の調査結果によると、PFOS/PFOAの含有量は1都2府10県の37地点で国が定めた暫定目標値(50ナノグラム/L)を超えている。大阪府摂県名沖縄県沖縄県沖縄県東京都千葉県東京都東京都神奈川県千葉県福岡県市町村名沖縄市宜野湾市中頭郡調布市白井市立川市府中市大和市柏市築上町地点区分河川湧水湧水地下水河川地下水地下水河川湖沼河川PFOS1462.8 1110.0 1121.7 153.0 330.0 294.0 259.0 238.0 173.0 131.0 PFOA45.3 193.0 66.3 403.0 19.2 43.2 42.8 10.5 18.0 14.9 津市の地下水からは、日本で最も高い1855ナノグラム(目標値の約37倍)が検出された。他には化学メーカーの工場などが集まる首都圏や阪神地区、泡消火剤を保管する多くの米軍基地周辺の河川水や地下水で汚染が確認されている。2.基準値が厳しい欧米各国 世界各国は、飲料水に含まれるPFOS/PFOAの基準値を相次いで厳格化している。世界保健機関(WHO)は2022年9月にPFOS/PFOAの基準値を1Lあたり各100ナノグラムとする暫定値を公表したが、出来る限り低い濃度を達成すべきと呼び掛けている。1)各国の基準値 欧州連合(EU)は、加盟国にWHOより厳しい基準値を求めており、ドイツは2028年にPFOS/PFOAなど4種類の合計で20ナノグラム/Lとする方針を決めた。EUの規制強化の動きは、2018年に欧州食品安全機関(EFSA)による意見書で、①PFOSに関し、成人における血清中の総コレステロール値の上昇、②幼児におけるワクチン接種時の抗体反応の低下PFOS+PFOA1508.1 1303.0 1188.0 556.0 349.2 337.2 301.8 248.5 191.0 145.9 第3種郵便物認可規制強化動向と処理方法吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]96

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