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SEW……地盤沈下が深刻化グローバル・ウォーター・ナビ 世界経済を牽引しているアジアの主要都市が、今や水没の危機に直面している。メガシティには多くの環境問題が発生するが、特に都市機能を根本的に機能不全に陥れているのは、地下水の過剰汲み上げによる地盤沈下である。1. インドネシアの首都ジャカルタ……水没の危機 インドネシア政府が、首都をジャカルタ(首都圏人口3400万人)からジャワ島外に移転する計画を明らかにした。移転理由は世界最悪と言われる交通渋滞だけではない。地下水の過剰汲み上げで地盤沈下が加速し、2025年までにジャカルタ市内の一部は5m沈下し、地球温暖化による海面上昇と異常潮位の高まりで首都水没の危機を迎えている。19年4月末の豪雨によりジャカルタ市内は交通がすべて麻(38)第1900号 令和元年8月27日(火)発行 ▲中国の地盤沈下(出所:China Water Research)痺し、大きな経済損失を被った。地下水の過剰汲み上げと海面上昇により、2050年までにジャカルタ北部の95%は海に沈むという試算も出て、首都移転論議が本格化している。2. 中国・上海など国内70都市 中国の水環境問題に詳しいチャイナ・ウォーター・リサーチ(内藤康行・代表)によれば、現地での報道は生々しい。中国全土の70余りの都市で程度の異なる地盤沈下が頻発している。以下は地下水の過剰汲み上げによる地盤沈下の深刻な都市である。◦上海市(人口2200万人) 1921年から地盤沈下が始まり、1966年から22年間で累計沈下量は2.67m、影響範囲は200km2を超えている。◦天津市(人口1300万人) 1959~1990年の最大沈下量は2.92m、影響範囲は237km2。◦海南省・海口市(人口225万人) 現在でも大量に地下水を汲み上げており、その汲み上げ量は20万m3/日に及んでいる。地盤沈下は頻繁に起こっているが、地盤沈下のモニタリング制度や、地盤沈下のデータも整備されていない状況にある。 当然のことながら内陸部の大都市もさらに深刻である。◦北京市(人口1950万人) 70年代以降、井戸の過剰汲み上げで地下水位は年平均12m下降、深刻な地域では地下水位の下降は35mとなっており、当然地盤沈下は継続されている。また浅い帯水層はすでに枯渇している。水不足で遷都論が出てくる由縁である。◦西安市(人口1000万人) 1971年以降、地下水の過剰汲み上げが激化、1958年から40年間の地盤沈下量は約1m、現在でも地盤沈下は続き、その影響は200km2に及んでいる。3. タイの首都バンコク……都市圏40%が水没か タイの首都バンコク都市圏(人口1600万人)では、1980年以降の経済発展に伴う過剰な地下水汲み第3種郵便物認可アジアの主要都市、水没の危機吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]51

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