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SEWグローバル・ウォーター・ナビ 今、ベトナムが世界から注目されている。人口9500万人(2017年推計)を擁し、平均年齢が31歳という活気のある国である。 2012年から2016年までの平均実質GDP成長率は5.9%を超え、同国経済成長率は堅調に推移している。成長の要因は、同国の政治情勢が比較的安定していること、アジア各国からアクセスも良く、相対的な労働力コストの安さと経済成長力の高さが魅力、また天然資源が豊富(鉱物資源、森林資源、水産資源、水資源)などである。 それゆえ各国からの投資案件も多く、特にハイテク産業には、同国は「投資インセンティブ」を導入し、投資拡大の後押しをしている。法人税は周辺諸国より安く、ハイテク産業の場合は、当初4年間は免税、続く9年間は税率5%、その後は税率10%が適用されるルールとなっている。産業の急速な発展と都市部への人口増加により同国の水需要も急拡大している。 ベトナムはインドシナ半島の東端に位置し、南北に1700km、面積は日本列島から九州を除いたくらいの面積(33万km2)を持つ。東側の海岸線は約3300kmの長さがあり、北部の中国、ラオス、カン第1858号 平成 29年12月19日(火)発行 ボジアとの国境付近は山岳・高原地帯が占め、国土の約8割が山地や高原である。ベトナムは、熱帯モンスーン気候に属しているが、北部と南部では気候が大きく異なる。ハノイを中心とする北部では四季があり雨季は5月から9月で年降水量は地域により1500ミリから2800ミリと大きく変化する。ホーチミンを中心とする南部では平均気温が26℃と高く、年降水量の地域的な変化は少なく1800ミリから2200ミリの間である。同国の国民一人当たりの水資源量は9853m3/年(日本の2.9倍)と豊富にあり水力発電が盛んでベトナム全体の発電量の約40%を占めている(2014年実績)。しかし他の水インフラの未整備が大きな課題である。 北部と南部には2大河川、紅河とメコン河が流れ広大なデルタ地帯が形成されているが、その他の多くの河川は急流で、流域地区の保水力が小さく洪水と渇水の被害が多い。ベトナムの主な産業は農業、特に米作が盛んであり水資源の約8割は灌漑に使われている。農業人口は国民の約5割を占めている。 最近は鉱工業、建設、各製造業など2次産業が大きなウェイトを占めるようになり、水需要が急拡大している。 上水道の普及率(直轄5市)は90%程度だが、他省都市の平均値は約70%である。 その水源は表流水が65%、地下水が35%である。全国に430ヵ所の浄水場があるが、設備が旧式で能力不足、さらに漏水率の改善が急務である。一方、水環境問題(水質汚染)が深刻化してきている。 急激な経済発展の一方で工場排水処理施設や下水道は未整備で、下水道の普及率は低く都市部でも20%程度である。上下水道事業は第3種郵便物認可ベトナム地図吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]ベトナムの水インフラ事情321.ベトナムの水事情2.ベトナムの水インフラ状況

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