上流国と下流国の利害の対決である。ナイル川紛争の特徴は、水需要が下流国(エジプト、スーダン)に集中しており、上流国である水源地域の水需要が極端に少ないことである。特に最下流のエジプトは国内水需要の97%をナイル川に依存しており、本来の農業用水に加え、近年GDP成長率が4%を超え、しかもカイロ大首都圏人口が2200万人(この10年間で倍増)を数え、新たな街づくりが急ピッチで進められている。同国の経済発展を支えるナイル川の水資源確保は国家の命題なのだ。 当初は上流国スーダンとエジプトの水利権争いだった。エジプトは歴史上の優位性と国際条約締結の事実、さらに下流域の水利権は守られるべきとして「上流国の水資源開発には下流国の同意が必要」第1852号 平成 29年9月26日(火)発行 い受ける密約が成立したとの観測がささやかれているが、真偽のほどは不明である。スーダンの電化率は24%(IEA2014年)であり、なんとなく納得のできる噂である。 国連機関の調べによると、世界各国で国際河川に頼らず、自国で自己水源を有する国は21ヵ国と言われ、当然日本も含まれている。我々は自国の恵まれた水環境に感謝しつつ、さらなる水資源の持続可能性を追求してゆくべきである。ナイル川流域諸国の水源・国外依存度国名エジプトスーダンウガンダケニアエチオピアルワンダ国外への水資源依存度96.9%77.3%40.9%33.1%0%0%第3種郵便物認可大エチオピア・ルネッサンス・ダム完成予想図(出所:Salini Impregilo S.p.A.)とする、いわゆる「下流の論理」を自国の主張論拠としてきた。1999年2月、国際機関と欧米諸国の支援により「ナイル川流域イニシアチブ(NBI)」が設立され、それぞれの国の水資源計画を出し合い、他国に影響のある場合は協議を義務付けている。しかし上流国は、逆に「上流の論理」を主張、「上流国の水資源開発は下流国から制約をまったく受けない」とし、その場でも常に対立が続いているのが現状だ。また隣国間の取り決めも常に疑ってかからなければならない。エチオピアが大ダムの構想を発表した時は、エジプトはスーダンと組み、両国で反対を唱えていたが、突然スーダンはエジプトに反旗を翻し、今度はエチオピア側についた。スーダンは大ダムが完成したら、その発電量の一部を貰
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