33億ユーロ(約4300億円)、堤高155m、堤全長約1.8km、総貯水可能量約740億m3、計画発電総量6000MW(フランシス型水車:375MW×16基)でアフリカ最大のダムである。 エチオピアにとり、このダムの建設は国家の威信をかけた大プロジェクト(GDPの15%占め、2012年)であり、1980年から90年代に同国を襲った大干ばつによる大飢饉(約100万人の死者を記録)からの国家再生と発電による経済発展の象徴と捉えている。 同国の全国電化率は27.2%(世銀調べ、2014年)であり、このダムが発電を開始すると、今まで乾季には毎日続く停電が解消され、国民生活の改善はもちろんのこと、経済発展の礎になるのだ。既に首都アジスアベバでは、電力事情の改善を先取りし路面電車の建設が進められている。ちなみにナイル川下流のエジプトの全国電化率は99.8%(世銀調べ)である。つまりエチオピアにとり豊富な水資源の確保は、国家の命運をかけた命の水なのである。2.ナイル川を巡る国際間協定の歴史 1929年、英国の統治下にあったエジプトとスーダンとの間だけで、盟主英国の指導で「ナイル協定」が結ばれた。この協定はナイル川の総水量の内、65%がエジプト、22%がスーダン、残りの13%は要求があれば、その他7ヵ国により分割取水されるという内容である。しかもエジプトとスーダンは拒否権を有している。さらに1959年エジプトとスーダンとの二国間で、エジプトが総流量の75%(555億m3/年)、スーダンが25%第3種郵便物認可 (185億m3/年)の再配分協定を締結している。これらの協定について流域諸国はクレームを唱えたがすべて無視された。もちろんエチオピアも、いずれも協定にも参加できず、常に「これらの協定はアンフェアであり、植民地時代からの悪しき既存協定は破棄されるべき」と主張してきただけであった。 近年、エチオピアのハイレマリアム・デサレン首相は「ナイル川は、神が我々(わが国)に与えた最大の贈り物(水資源)だ」とメ 第1852号 平成 29年9月26日(火)発行ディアで語っている。デサレン首相はアジスアベバ大学で土木工学の学位取得後、フィンランド・タンベレ工科大学で衛生工学修士号を取得、帰国後は同国ウォーター・テクノロジー研究所の学部長を13年間務めるなど、水のプロである。当然のことながら水資源の持つ、あらゆる可能性を引き出す努力を続けている。3.水戦争の解決手段は 国際河川を巡る争いの大部分は、白ナイルと青ナイルの季節別流量(出所:http://www.mbarron.net/Nile/fctfl_nf.html)ナイル川・河床高低図(出所:http://www.mbarron.net/Nile/fctfl_nf.htmlに筆者加筆)
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