SEWグローバル・ウォーター・ナビ ブラジル北東部のセルトンと呼ばれる半乾燥地帯では、2012年以降、雨がなく降水量はほぼ皆無で、草はすべて枯れ、家畜の死骸が渇ききった大地に横たわっている。地域住民に水を供給していた川や貯水池は干上がり、当局によると底をついた場所も多く、現在の貯水量は約6%と推定されている。8州にまたがるセルトンには約2500万人が居住しているが、そのうち300万人に十分な飲料水を供給できない事態に突入している。 世界でもトップクラスの水資源量を有するブラジルだがサンパウロをはじめ主要都市の貯水池の水位も例年の3分の1以下となっている。専門家は、この現象について太平洋のエルニーニョ現象や北大西洋の海水温の上昇などを挙げているが、改善の兆しがない。水資源の枯渇に加え、上下水道インフラの不備が水ストレスに拍車をかけ、国家を脅かす事態となっている。1.水資源の枯渇問題 同国は総発電量の87%を水力発電に頼っている世界最大級の水力発電大国である。イグアスの滝近くに建設されたイタイプダムは貯水量290億tで世界第二の発電量(1400万kW)を誇り同国の電気供給量の約20%を占めている。その第3種郵便物認可 発電用水も枯渇の危機に直面している。さらに世界最大の河川であるアマゾン川の水位が過去40年間で最低レベルになっている。枯渇の原因は地球温暖化の影響、世界最大の森林地帯であるアマゾン地域の大規模な森林伐採(過去40年間で森林面積の20%が消失)による保水力の大幅な低下や、地下水の過剰取水等が挙げられている。第1847号 平成 29年7月18日(火)発行水資源の枯渇はそれらの複合人災とも言われている。2.水不足で1100万人が水道を使えない事態に 大サンパウロ都市圏に住む約1100万人がカンタレイラ貯水池の水を利用している。カンタレイラ貯水池は州内の5河川から取水し、世界最大規模の複合型貯水池(保有水量約9.9億m3、1973年完成)であるが2014年2月に過去最低値となる貯水率19%を記録した。今夏の降雨量は予想より50%も少ない。サンパウロ州知事は節水の呼びかけは勿論のこと、新たに年間平均で20%の節水を達成した家庭に対し、水道料金を30%割り引く政策を導入している。 皮肉なことに水源地から遠く離れたサンパウロ市内では時々発生ブラジル地図吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]ブラジル/国家を脅かす水資源の枯渇と上下水道27
元のページ ../index.html#78