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由は完全なる「水の統治」であった。海沿いの多くの集落は今でも、古代に建設された水路や貯水池を修復したものに頼って生活している。・アンデス山脈に依存する水資源 国土を南北に貫いているのがアンデス山脈であり、最高峰はアスカラン山(6778m)である。アンデス山脈を越えた東側は気候が一変する。アマゾン熱帯雨林地域で、原生林に覆われ雨が多く蒸し暑い、乾季の気温は40℃を超えることもあるが、雨季にはまとまった雨が降り高温多湿となる。このアンデス山脈から多くの川が南北に流れており、西に流れる川はコスタの砂漠を潤している。アマゾンの源流もアンデス山脈にあり、アマゾン川はペルー最大の河川である。北部を流れるプトゥマヨ川はペルーとコロンビアの国境線を形成している。またチチカカ湖はペルーとボリビアの国境に位置している。このようにペルーの水資源はすべてアンデス山脈に依存している。・多すぎる水資源 言うまでもなくエル・ニーニョ現象である。今回の大洪水を引き起こした「沿岸部エル・ニーニョ」は通常より平均3~6℃上昇している海水温度の影響を受け、異常な勢力を保ち、強い降雨を発生させ、川の氾濫、土砂崩れなどを引き起こしている。特にペルーの重要な農村地帯であるビウラ地区の川が氾濫(氾濫水量は3200m3/秒)となり歴史上の最高値となった。農業被害は、三月末現在で6千ha、6200万米ドルの損失が報告されている。また首都リマでは市内のリ第1843号 平成 29年5月23日(火)発行 マック川が氾濫し、約7万世帯が家を失い、大統領府の近くまで浸水する被害が出ている。2.上下水道の普及状況 国内レベルでの普及率は未だ低く、深刻な問題である。統計の数字が少ないのが難点であるが2007年における上水道の人口別普及率は77%、一方下水道の普及率は62%である。都市部と農村部での普及率に大きな隔たりがある。これは都市部では上下水道企業体(EPS)が上下水道サービスを提供しているが、農村部では各コミュニティベースの組織に委ねられていることが要因である。国内最大のEPSはリマ上下水道企業体(SEDAPAL)であり、総人口の約3割にサービスを提供している。 農村部においてのもう一つの問題点は下水処理であり、下水の大部分は何の処理も施されず放流さ下水道(管路)73%33%62%出所:ペルー国家建設衛生局(VMCS)れ水質汚染を引き起こしている。イカ州のように下水道普及率が高い州が存在する一方、パスコ州、ロレト州、アプリマク州のように普及率0%の州も存在する。・便座のないトイレ 多くの観光客が訪れるペルー、公共施設のトイレは洋式の水洗トイレだが、驚くのは便座がついていないトイレが多いことである。元々は便座がついていたトイレでも盗まれてしまっている、また最初から便座の取り付けがないトイレも多い。ではどうやって用を足すのか、陶器に直接お尻をのせるのか、子供なら便器の中にはまるのでは? またトイレットペーパーがついていないトイレも多いので、ポケットティッシュを持ち歩くことが必須である。さらにトイレの注意書きには「トイレットペーパーを便器内に流さないよう下水処理施設24%データなし24%第3種郵便物認可ペルーにおける上下水道、下水処理施設の人口別普及率(2007年)ペルー北西部に降り続いた豪雨で、各地で洪水や土砂災害が発生(提供:ペルー大統領府 Presidencia Perú)地域都市部農村部合計上水道82%62%77%

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