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SEWグローバル・ウォーター・ナビ 南米ペルーと言うと、インカ帝国を思い浮かべる人も多いだろう、16世紀までは世界で最大級の帝国であった。空中都市「マチュ・ピチュ遺跡(標高2430m)」は世界7不思議の一つとして知られている。急峻な崖の上につくられた空中都市、5~10トンもある巨石をどうやって運び上げたのか、また水の確保はどうしていたのだろうか、興味のあるインカ帝国の遺跡である。ペルーの海岸地帯は乾燥した砂漠地帯で、一年中一度も雨の降らない年もあったが、近年はエル・ニーニョ現象の襲来で劇的に様変わりしている。エル・ニーニョは10年から15年の周期でペルーを襲っている。2017年は、その当たり年である。今年の1月から降り続いた豪雨は、大きな洪水被害をもたらしている。ペルー政府の発表(3月末時点)では洪水被災者は約10万人、洪水の影響を受けた人々は63万人に及び、489の橋が倒壊、大きな経済的な損失が報告されている。1.ペルーの国土と水資源 人口は3138万人(2015年)、国土面積は約129万km2(日本の約3.4倍)で南北に長い国である。その国土は三つの地形に分けられる。砂漠が広がる沿岸部のコスタ(海第3種郵便物認可 岸砂漠地帯、国土の12%)、アンデス山脈が連なるシエラ(山岳地帯、国土の約28%)、アマゾン流域のセルバ(森林ジャングル地帯、国土の約60%)である。さらに細長い国なのでコスタとシエラでは北部、中部、南部と地域性の違いが明らかである。気候としては基本的には熱帯であるが、標高の差や南北の差により各地域で大きな違いがある。コスタは太平洋から第1843号 平成 29年5月23日(火)発行標高500mまでの地点を指し、長さ3000km、幅50~150kmの狭い地域に国民の半数以上が暮らしている。・少なすぎる水資源 首都リマは海岸砂漠地帯で、このエリアにはペルー人口の半分以上が住んでいる。砂漠であるがフンボルト海流の影響で緯度の割には過ごしやすい。年間平均気温は20℃前後で、年間降水量は13~30mmである。あまりにも雨が降らないので現地では“チャラ”と呼ばれている。しかし灌漑を行えば通年で農耕が可能な地域である。古代ペルー人は、日干しレンガで神殿をつくるとともに水路と貯水池を組み合わせ、水供給を完備した都市国家を建設した。インカ帝国が短期間のうちに南米で広大な領土を築きあげることができた理ペルーの地理吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]~アンデス山脈に頼る水資源~南米ペルーの水事情25

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