(2800m3/秒)の放流を続け、ダム決壊を免れている。3月1日現在でダムの非常水位より60フィート(約18m)低下しダム決壊は免れたが、依然としてダム湖に毎日2万立法フィート(560m3/秒)の流入が続いており、今後の気象条件により予断を許さない状況である。2.シリコンバレーで大洪水 2月22日、同州、IT企業の本拠地と言われるシリコンバレーを流れるコヨーテ川の堤防が決壊し人口約100万人を抱えるサンノゼ拡大地区に避難命令が出された。地元当局によると上流の貯水池の氾濫で川の水位が上がっていた所に、数日にわたる豪雨で堤防が決壊した、このような洪水被害は過去100年で最悪の規模であった。同地区は世界に冠たるGoogle, Yahoo, Dell, Intel, Oracle, Cisco, FacebookなどのIT企業がズラリと軒を並べている。筆者も半導体関係の仕事で、この地区に1年くらい通ったが大雨に遭ったことは一度もなかった。毎日が青空だったと記憶している。サンノゼ当局は2月27日、今回の洪水被害額は7300万ドル(約84億円)と発表し、被害地区の緊急洪水対策費として議会に2200万ドル(約25.3億円)を要求したことを明らかにした。実はサンノゼ当局は1995年の洪水を機に、総額5億ドルの「100年洪水第1839号 平成 29年3月28日(火)発行 対策プラン」を議会に提出していたが、財政難と被害確率「100年に一度の洪水に備える」に「緊急性がない」とのことで否決されていた。 オロビル・ダムの排水路の陥没やコヨーテ川の堤防・破堤など老朽化による危険性を指摘されていたが、財政難や議会の認識不足により引き起こされた水災害とも言えよう。気候変動による水災害が世界で頻発している。カリフォルニアの水災害を他山の石として、日本も水インフラの強靭化に取り組まなくてはならない。3.カリフォルニア州の水資源 同州の気候は緯度、標高により大きく異なり亜寒帯気候から砂漠気候、地中海気候と様々である。長い海岸線に沿い年間雨量は380ミリから1250ミリと大きな差がある。 しかし、同州の2013年の年間降雨量は約180ミリしかなく、年平均降水量約560ミリの三分の一以下であった。このため多くの井戸は干上がり、貯水池の貯水率も30%を割っていた。 米国の農務省の調べでは、シェラネバタ(スペイン語で雪の山)山脈の2011年積雪量は平年の171%であったが、12年は52%、13年は42%、14年は過去最低水準の25%まで落ち込んでいる。降水量の少ない同州では雪解け水による地下水が生活を支えてきた。ゴールドラッシュ(1849年)以降、過去150年間は、この地下水が命であったが、近年では帯水層の水位が100フィート(約30m)以上も低下している。さらに南カリフォルニアの重要な水源はコロラド川からの水供給であったが、2000年代に入り、流域貯水量は最大値の37%まで減少している。目に見える積雪量や河川水の減少、さらに地下水の減少が続き、危機的な状況になっている。特に地下水の回復には数十年や数百年かかることは水利学の常識であり急激な水資源の回復は望めそうにない。 同州では干ばつ対策と将来の水資源を確保するために下水処理水の再利用や海水淡水化プロジェクトが展開されている。4.緊急干ばつ対策 同州は過去に何度も干ばつに見舞われているが、この4、5年の干ばつは記録的であり、人々の生活や農業に大きな影響を与えている。ジェリー・ブラウン同州知事は2014年に「都市部の水使用量を平均25%削減する」と緊急干ばつ対策案を議会に提案し承認を得ている。それに従いサクラメント市やフォルサム市は「すべての住民と事業者に20%節水義務付け」をし、特に「芝生への水やり」の許可時間と曜日(週二日)を定め、違反者には最高1000ドルの罰金を科している。しかし翌年も干ばつが続き、米国人が自慢する「青々とした庭の芝生」が黄色く枯れてしまい、その対策として「芝生用の緑のスプレー」がバカ売れしている。米国人にとって芝生の広さと青さがステータスである。5.恒久的な水資源の確保……下水処理水の再利用 米国の下水処理水の再利用について、カリフォルニア大学デービス校・浅野孝名誉教授によると、米国には1万6400ヵ所の公共下水第3種郵便物認可シリコンバレー大洪水 サンノゼ市内での救助活動
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