EWSグローバル・ウォーター・ナビ カリフォルニアは元々、水資源が不足している州である。2000年以降、気温の高い年が続き、水資源の源となっているシェラネバタ山脈の積雪が急減した。特にこの4、5年は記録的な干ばつが続き甚大な農業被害はもちろん、大規模な山火事が頻発し生命財産まで奪われる危険な状態に直面していた。ところが2月初めから大雨に見舞われ、同州北部に位置する全米最大の高さの堤を持つ「オロビル・ダム」が決壊する恐れがあり、19万人に緊急避難勧告が出された。また世界的なIT企業が密集するシリコンバレーで堤防が決壊し100万人に避難命令が出た。大干ばつからダム決壊騒ぎ、堤防決壊まで、いったい同州で何が起きているのか。1.オロビル・ダムの決壊の恐れ 2月初めから降り続いていた大雨により、州都サクラメントから100kmほど北に位置する全米で最も高い堤(235m)を持つオロビル・ダムが決壊する恐れがあり、2月13日ジェリー・ブラウン知事は「非常事態」を宣言し、オロビル市民1万6千人を含む、流域(コバ郡、ビュート郡、サッタ―郡)住民の19万人に被害が及ぶとし「緊急避難勧告」が発令された。緊第3種郵便物認可 急放流が続く中、さらに常用排水路に大きな穴が見つかり、このままでは常用および緊急排水路が崩壊しダム本体が崩壊する恐れがあることが矢継ぎ早に報じられた。 実は1968年にダムが完成してから初めて、この常用排水路が使用第1839号 平成 29年3月28日(火)発行された。なぜなら今までダムが満水になることはなかったからである。だが雨と雪溶けの水は急速なペースでダム湖に流入し、水位が急上昇したのだ。同時にオロビル・ダムの致命的な欠陥が報じられた。この米国最大のオロビル・ダムはロックフィールダム(岩石や土砂を積み上げ、粘土などで中心部に遮水層を作ったダム)であり、以前から常用排水路が老朽化により陥没していたが、財政難もあり修復されず放置されていたのだ。そんな状況の中で、今回の大雨による融雪水もあり、築50年以上のダムが耐え切れなくなってきた。14日以降、排水路の崩壊の危険性を承知の上で毎秒10万立法フィートオロビル・ダム(米国カリフォルニア州)(出所:「California Department of Water Resources」http://www.water.ca.gov/swp/facilities/Oroville/LakeDam.cfm)破壊された排水路(常用排水吐)(2017年2月27日、出所:同上)〈ダム概要〉◦建設開始:1961年◦ダム完成:1968年◦堤高:235m◦堤頂長:2,109m◦型式: ロックフィール型◦ダム容量: 59,344,000m3吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]24米カリフォルニア州の水インフラ問題~大干ばつからダム決壊・洪水まで~
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