SEWグローバル・ウォーター・ナビ イラン・イスラム国(以下イラン)は言うまでもなく、世界有数の産油・天然ガス大国であり豊富な地下資源を有しているが、長年にわたる経済制裁の影響で石油・ガス関連産業は低迷を続けていた。2016年1月の経済制裁解除で増産を開始し国際石油・ガス市場への本格的な復帰を目指している。今回は16年11月、来日中の同国、ハミッド・チットチアン・エネルギー大臣と単独でインタビューの機会を得たので、今後のイランのエネルギー政策およびエネルギー省の所管である水資源問題について聞いた。1.経済成長を目指すイラン 経済制裁解除を受け、同国のアリー・タイエブニア経済財務相は「2016年は8%の経済成長を目指す」と宣言し、エネルギー(石油、ガス、再生エネルギー)、鉱業、インフラ整備(道路、鉄道、橋梁、港湾、空港など)、輸送(自動車、鉄道車両、公共交通)、環境(水、大気、土壌)などのプロジェクト分野の開拓に外資を導入すると発表し、ハッサン・ローハニ大統領とともに「第6次5ヵ年計画」遂行のため、関係する各国との外交や世界を代表する企業群と積極的に交渉を繰り広げている。第1837号 平成 29年2月28日(火)発行 イラン市場は最後のフロンティア市場とみられ、7800万人の国内市場のほか、地政学的にもアジア、アフリカ、中東、欧州へのハブに位置するために世界各国がイラン市場獲得にしのぎを削っている。 今のところ、自動車やハイエンド製品(半導体、医薬品、メディカル機器など)分野ではドイツが一歩リードしている。また同国の輸出入額とも第一位の中国は、イラン在住中国人約2万人を核に、あらゆる分野でのビジネス機会を狙っている。2.イランの石油・ガス確認埋 原油の確認埋蔵量は1570億バレル(2014年1月現在)であり、ベネズエラ、サウジアラビア、カナダに次いで世界第4位である。これは世界の総原油埋蔵量の約10%に当たり、石油輸出国機構(OPEC)加盟国の合計埋蔵量の約13%を占める。また天然ガスの確認埋蔵量は33兆7600億m3であり世界第2位である。◦現状の課題 同国はイラン革命(1979年)、イラン・イラク戦争(80~88年)、米国を主体とする経済制裁(79~2016年)と長きにわたる“困難”を自前の技術開発の努力により克服第3種郵便物認可ハミッド・チットチアン・エネルギー大臣と筆者(2016年11月 東京都内にて)してきた。しかし石油業界のグローバル標準からみると、その技術は旧式で陳腐化し、低効率であると評されている。つまり豊富なエネルギー資源を保有しながら、低い生産性に甘んじている。外貨獲得の手段として液化天然ガス(LNG)基地の建設計画もあるが進展していない。◦ エネルギー大臣の発言…エネルギーについて 石油・ガスの採掘は石油大臣の所管であるがエネルギーと密接な関係があるので、特にエネルギー源となる石油精製能力の増強と天然ガスの需要促進(ガス・パイプラインの活用)に注力している。例えばイスファハン製油所とバンダルアッパース製油所のガソリン製造能力増強などがある。エネルギー省の最大の課題は電力供給量の強化と需要管理(デマンドマネージメント)である。老朽化した発電設備の更新や効率化のために最新の技術を導入する必要がある。また国家として2030年までに再生可能エネルギー(ソーラー、風力、水力、バイオマス、地熱など)を7500万MWに増強する。加えて地域分散型・発電設備(天然ガスの活用)も計画している。これらを実現するために海外からの資本や技術導入を積極的に受け入れたい。日本には優れた技術・製蔵量と生産性吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]イラン・イスラム共和国の エネルギー大臣に単独インタビュー23
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