SEWグローバル・ウォーター・ナビ 1月20日世界中が見守る中、トランプ新政権が誕生した。1年半以上にわたる米国大統領選挙期間中には、多くの候補者が登場しては消え去り、最終的に民主党のヒラリー・クリントン氏と共和党の実業家ドナルド・トランプ氏の一騎打ちとなった。昨年11月、世界のマスコミの予想に反しドナルド・トランプ氏が当選した。選挙期間中のスローガンについて多くのマスコミは、詳細にわたり報道し、それらへの期待や懸念、そして脅威について論説を続けている。はっきりしていることは、トランプ新大統領が掲げている「米国第一主義(American First)」であり、その内容も多岐にわたり米国経済の活性化のためなら国際ルール(TPP、WTO、NAFTA、パリ協定など)からの離脱を含め、「なんでもやる」という強い姿勢である。1.環境・エネルギー政策 環境やエネルギーに関しては、「気候変動は嘘っぱちである」とパリ協定からの離脱をほのめかした。トランプ氏は、このような環境規制は不要で不合理であり、国内経済を弱め、国内失業者を増加させるという視点から、厳しすぎる環境規制は米国の国益に反する第3種郵便物認可 と強調している。さらにこのような環境評価をしている国連の国際機関には、米国からの研究拠出金を減らすとまで明言している。同時に米国内の環境規制機関、例えば米国環境保護庁(EPA)の予算も人も減らせ! とキャンペーンを張っている。エネルギー開発では、石油、シェールガス、石炭の国内生産の増強、さらに幹線パイプライン(カナダからテキサス州まで)の建設推進を唱えている。その根底は環境よりも米国第一主義の根幹となる経済効率性のあくなき追求のスタンスである。 多くの読者は、気候変動に対するパリ協定から離脱しようとするトランプ政権の立場は、今までの物的証拠の積み上げ、科学的な合意や専門家の意見にすべて逆行していると指摘できるであろう。このような環境問題だけではなく、キャンペーン中に掲げた過激な主張を持ち続け、トランプ新政権は強行突破するのか、誰もその行方を予測できない、まさにNO WAY!(とんでもない!)という「トランプ占い」の様相を呈するだろう。国内においても当然、民主党が主体の州と連邦政府との対立が予想され、最後は連邦最高裁にまで判断をゆだねられるケースが激増するとも見られている。第1835号 平成 29年1月31日(火)発行2.水インフラ・大統領選挙期間中のキャンペーン 水インフラに関しての選挙期間中のスローガンは少ない。水道インフラについてはミシガン州フリント市の鉛汚染問題(2016年1月、市民10万人から高濃度の鉛検出)に触れ、「水道は国民の命に直結する問題だ、新政権発足後すぐに水道インフラの整備に取り組みたい」と述べ、またハリケーン等での洪水被害(2016年、19件の大規模洪水被害額3兆円超)を受けたテキサス州やフロリダ州での演説では「自然災害に負けない強靭な国土を創る」ことを約束する、このためにはヒラリー・クリントン候補が提唱した5千億ドル投資の2倍の約1兆ドル(120兆円―10年間)をインフラ整備(道路、水道、鉄道、港湾、空港、通信など)に費やすと力説した。しかし、それ以上の詳細内容や予算内訳は、一切述べられていない。3.米国内の水道インフラの現状と課題 基本として、日本との比較を述べてみよう。国土面積は日本の約25倍、人口は日本の2.55倍(3億2400万人、2016年)、しかし人口密度は日本の10分の1である。米国の水道事業は公営が85%、民間経営が15%である。公営の水道事業体数は約2万4千であり、地方自治体や水道委員会(Water Authority)が運営している。また米国の水道は5万1498浄水システムで構成されている。浄水システムの数が多い州、テキサス州は5157、カリフォルニア州3103、ニューヨーク州は2729である。水源別では河川水に頼っている給水人口は全体の吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]トランプ新政権による 米国の上下水道インフラの行方は?22
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