GWN1-50
63/132

明している。小生なら一言付け加えるだろう。「現在の所、軽微な陥没であるが、ゲリラ豪雨等による更なる道路陥没の拡大を防ぐために、下水道インフラには長期的な投資が必要である」と。無料で国民にPRできる最高の機会をフルに活用すべきであろう。下水道部は下水道インフラの重要性を強調したかも知れないが、残念ながらマスコミには報じられていなかった。また筆者が前述している「下水道管の劣化による道路陥没のメカニズムなど」は業界人には常識であるが、世間には余り知られていない事象であり、世間に幅広くPRする必要がある。2.下水道事業の今後の施策 新下水道ビジョン2100では、「循環のみち下水道」を旗印に、社会経済情勢の変化に対応した下水道の使命や、新たな下水道の使命として「持続的発展が可能な社会の構築に貢献」など将来構想が掲げられているが、最も関心の深い「現在の下水道事業の生き残り策をどうする」かについては「管理時代への移行(マネジメント元年)」として「アセットマネジメントの確立」が述べられているに過ぎない。同じ行政区域では汚泥処理などの統合化が進められているが、従来の枠を超えた新たな取り組みが求められている。例えば広域連携化である。水道事業の生き残り策を見てみよう。◦水道事業の現状と広域化 この10年間で約2000億円の水道料金収入の減収である。平成26年度の水道統計によると、約1400水道事業体による水道料金収入は平成16年度の2兆4589億円から、10第1833号 平成 28年12月20日(火)発行 年後の平成26年度には2兆2561億円と、2028億円の減収となっている。また前年度・平成25年度と比べると359億円の減収であり、人口の減少と節水機器の普及で年々減収幅が増加している。厚生労働省の専門家会議の報告書によれば、少子高齢化で40年後には給水人口が3割減少し、水需要が4割減少するなど水道事業が立ち行かなくなることを指摘している。現状でも慢性的な赤字の水道事業体は半数を超えている。生き残り対策の一つとして水道事業の広域連携化が進められている。 例えば群馬県東部の「群馬東部水道企業団」の設立が挙げられる。これは従来、自治体ごとに行ってきた3市5町(太田市、館林市、みどり市など)の水道事業を統合し、給水人口45万人の規模に拡大し水道事業の効率化、収益性を狙った国内第一号の試みである。また県境を越えた水の供給では「八戸圏域水道企業団による広域化」、これは青森県南部地域と岩手県北部の水道施設30ヵ所をまとめて管理・運営する、県境を越えた事業連携の試みである。さらには香川県の「香川県広域水道事業体構想」があり、これは県内給水人口約96万人向けの水道事業(県、8市8町で実施中)を統合し、1事業体として効率的に管理運営する試みである◦流域下水道事業の見直し 広域化については下水道行政の方が先行している。市町村が行う公共下水道を活用し、流域ごとに整備の効率化を求めた「流域下水道」の概念は昭和45年の下水道法の改正で実施され安全・安心な社会造りに貢献してきた。しかし今後、日本が直面する人口減少や社会構造の変化に応じた流域下水道事業の根本的な見直し(流域下水道の存在の意義、処理対象計画人口、実行予算額など)が必要である。技術面は専門家が多いので言及を避けたいが、収益面から見てみよう。「雨水公費・汚水私費」が原則の下水道収益構造である。平成23年度の下水道収入は約3兆2千億円であるが、下水道(汚水)使用料収入は全体の44%であり、雨水公費の原則から一般会計からの繰入金比率は47.1%で1兆5千億円を超えている。 受益者負担の生じない(収益なき)雨水の排除は、国や自治体の予算次第であり、すべての予算も厳しくなっている。根本的な解決策の一つとして私有地保有者やビルオーナーなどから雨水処理費の徴収なども考えるべき時期に来ている。また受益者負担である汚水処理費用は、水道使用量に比例して徴収されているが前述のように水道料金収入も過去10年間で約2千億円減収である。当然下水道収入も比例し減少している。簡単に言うと日本の上下水道収入も年々減少し陥没の一歩手前に差し掛かっている。3.さいごに 博多駅前の道路陥没事故から、将来の下水道インフラの在り方について考えてみたが、下水道事業には、財源確保の問題、下水使用料金の格差問題(平均で1.4倍)、技術者の不足、都市型洪水対策などの課題が満載である。ぜひ来年は「社会を支える下水道の持続可能な発展」のために具体的な論議が湧き起こることを期待したい。日本を陥没させてはならない。第3種郵便物認可

元のページ  ../index.html#63

このブックを見る