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枯れたフォルサム貯水池第3種郵便物認可 が活況を呈している。過去5年間で約10倍に水利権価格が上昇している。農家では作物を栽培して売るより、水利権を売却した方が、利益が出る地域も増えている。また水道料金について節水を徹底するために季節別の料金設定を強化する自治体も増えている。5.州の経済損失額は カリフォルニア州の農業ビジネスの規模は45ビリオンドル(約5兆4000億円)。 これは米国穀物市場規模の15%に相当する。その農業が水不足により重大な危機に直面している。カリフォルニア大学デービス校のリチャード名誉教授は、昨年だけで1万7千人以上のフルタイム従業員と季節労働者が失業し、その農業被害は総額22億ドル(約2640億円)を超えたと試算し、このまま干ばつが続くと今後の農作物の作付けが不可能になると警告している。また今年2月には同州の失業率が10%を超えた。 さらに深刻なのはハイテク産業が密集するシリコンバレーである。半導体製造に欠かせない超純水や製造用水にも影響が出始めている。州税の高さと水不足が拍車をかけ一部のハイテク企業は州外へ本社や工場を移転し始めた。 このためハイテク産業の本社が集まるマウンテンビュー市では、水不足の非常事態宣言を発し節水対策を強化しハイテク企業の州外移転を防ごうとしているが、逆に五大湖に面するオハイオ州やイリノイ州は「税金が安く、水と土地が豊富なわが州へ」とハイテク企業の誘致に力を入れている。 同州全体の経済損失は、水不足による水力発電量の減少等も合わせ、3ビリオンドルに達し、このまま干ばつが続くとさらに経済損失が増加すると見込まれている。6.米国経済に与える影響 カリフォルニアは米国で生産される野菜(レタス、葉菜類)や柑橘類・ナッツ類(グレープフルーツやアーモンドなど)の約半数を生産する重要な州であり、その影響は同州に留まらず全米に波及することになる。 日本も米国から多くの農産物を輸入している。カリフォルニア州の干ばつ被害は米国のみならず日本の食糧事情にも影響を与えるであろう。米国の悩みはさらに続く。仮に農作物価格が大幅に引き上げられると、隣国メキシコから安価な農作物の輸入が急増し、国内の農業や農業関連産業および国内雇用が失われ、当然外貨も失われる最悪の結果がもたらされることを危惧している。まさに水資源の有無が国家経済を左右する一例である。第1792号 平成 27年5月26日(火)発行 しかし逆に水不足問題解決には大きな水ビジネスチャンスが存在する。7.水ビジネスの狙い目は米国 日本の水処理メーカーは海外水ビジネスというと、すぐに東南アジアを目指すが、政府開発援助(ODA)頼みで入門編では正解であるものの、大きなビジネスは期待できない。むしろ4兆ドル水市場(約480兆円、2030年までの投資総額(OECD調べ))が存在し、技術を正しく評価し、法体系の整った米国で日本企業は勝負すべきであろう。 既に日立製作所、JFEエンジニアリング、クボタ、水ingなどは、市場調査や営業活動を開始している。特にメタウォーターは米国現地法人(METAWATER, USA INC)を2013年に設立し、福島一郎常務取締役を社長に送り込み積極的な営業活動にまい進している。ぜひ米国のような先進国で勝負できる日本水企業の活躍に期待したい。

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