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第3種郵便物認可 類を増やし海苔の収穫量や品質を高める試みである。佐賀海苔は、全国の海苔生産量の40%を占め、12年間連続で日本一の生産高を誇っている(平成26年度、農林水産省統計)。 また下水汚泥を菌体高温発酵(90℃以上)させることにより、汚泥中の雑草の種子や病原菌を死滅させ良質で完熟した肥料を製造している。この下水汚泥肥料に地域の食品工場から発生する有機性副産物を混合し、さらに肥料の品質を高め地域の農家に供給している。佐賀県は北海道に次ぐ全国第二位の玉ねぎの出荷額を誇っている。2)下水処理水でコメの増産 山形大学農学部(鶴岡市)の渡部徹教授が中心となって進めている下水処理水を使った飼料用稲作栽培の実証試験が鶴岡浄化センターで行われている。この実証試験に先立ち、同学部キャンパス内で予備試験栽培をしたところ、10a(アール)当たり、収量が最大で約900kg、タンパク質含有量が、今までの栽培に比べ約2倍高いとの結果を得ている。勿論、重金属除去を行い、バクテリアやウイルスの心配があるので、完全殺菌が必 第1829号 平成 28年10月25日(火)発行ベトナムのコメ生産と作期単収栽培期間作付面積(1,000ha)冬・春作11~4月頃3,060夏・秋作4~8月頃2,108ムア作8~11月頃2,021出典:Vietnam Rice Industry in 2009(T/ha)6.14.84.5神戸市・リン回収実証プラント【2012年国土交通省B-DASHプロジェクト】(写真提供:水ing株式会社)要である。3) ポリシリカ鉄(PSI)凝集剤の使用で丈夫なコメの栽培 浄水発生土処理で使用されているポリシリカ鉄(PSI)は、その成分にシリカを含むために、稲にとり根張りと茎が丈夫になり、3毛作の収穫時に襲来するサイクロン等による稲のダメージが防げる。東北大学農学部の試験によるとPSIで栽培した秋田県や長野県の水稲栽培で効果があることが認められている。 栄養源の含まれた下水処理水を活用し、さらにPSI凝集剤で処理されたシリカを含んだ肥料は、彼らにとり最も望ましいことであり、2毛作から3毛作になり現金収入が増える。「コメ増収のために利益を生み出す下水整備が必要だ」と逆解法の考え方で進める必要がある。2.日本の試み…下水から農業資源の回収1) 下水汚泥から農業資源の回収…自治体の取り組み 下水汚泥からコンポスト製造は、過去10年間平均で汚泥量220万トン/年(DS)の内、緑農地還元は約11%、その中で純コンポスト化は約2%である。コンポスト技術は古典的であるが、日本のコンポスト・ノウハウの蓄積は十分にアジア諸国に貢献できるものである。また多くの自治体では肥料として高級化路線をとっている。これらの技術も彼らの所得水準の向上に合わせ活用できるだろう。◦神戸市の例(リンの回収) 国交省の「下水道革新的技術実証事業(B-DASH)」で採択され神戸市東灘処理場に設置された実証プラント(神戸市、水ing、三菱商事アグリサービスで推進)では年間8万7200m3の下水汚泥を処理し、年間130tのリンを回収するメドが立っている。「神戸再生リン」を活用した配合肥料はJA兵庫六甲で試験販売されている。◦岐阜市の例(リンの回収) 岐阜市では下水汚泥の焼却灰(年間約1千t)から300t/年を「副産リン酸肥料」として回収している(メタウォーター社施工)。この肥料は農林水産省の肥料登録を得て「岐阜の大地」として販売されている。◦ 佐賀市の例(海苔の増収、汚泥肥料化) 佐賀市は「バイオマス産業都市さが」を目指して地域資源の循環にチャレンジしている。 下水処理水には前述の如くリンが多量に含まれているので、冬から春先にかけて放流水中の栄養塩

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