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SEW ~下水・食料・エネルギーの三位一体で東南アジアの社会づくりに貢献~グローバル・ウォーター・ナビ視点を変えての下水道の国際展開 下水道は資源の宝庫である。最近「資源とエネルギー、食料」の面から下水道が見直されている。下水道は単なる汚水の処理や雨水の排除だけではない。多面的な視野で俯瞰すると下水道システムは、その地域の水循環の主役であり、さらにバイオマス資源や熱資源が集まった最高の資源循環のインフラシステムである。日本国が抱える大きな課題、例えば地域創生(地域に新産業と雇用の創出)、TPP(環太平洋パートナーシップ)対策としての食料自給率の向上やCOP21/パリ協定の国際公約「温室効果ガスを26%削減」などの課題解決に下水道を役立てようとする試みがなされている。現在、日本国内で実証中の多くの試みは最終的には世界、特にアジア諸国の経済発展や生活向上に向けて発信すべき「世界に誇れる日本発の下水道技術」である。しかし勘違いしてはいけない。東南アジア諸国にとり、日本が提案する「浄水場や下水処理場を含む安全・安心な水環境」ではなく、本当に望んでいるのは「貧困からの脱出のために、すぐに役に立つ有機性肥料や、すぐ使える生活用の電力」なのである。今回は大都市向けの下水道整備ではなく、所得の低い農村部への日本の貢献策を考えてみたい。第1829号 平成 28年10月25日(火)発行 (出典:世界銀行/World Development Indicators 2011)を買い付ける資金が不足していることである。主戦場はコメであるが、我々はグラム単価の高い換金作物に狙いをつけたい。具体例を示す。ベトナムやカンボジアでは、今世界中に高値で売られている黒コショウを増産しているが、化学肥料を使うと特徴のある風味と味が変化するために有機肥料が望まれている。特に欧米の有名メーカーからは信頼ある有機肥料の使用が要求され、しかも厳しい認証が求められている(ISO/9001/22000、HACCP、GAPなど)。またベトナムでは外貨獲得の優等生カシューナッツは世界第一の出荷額を誇り、さらに最近ではベトナムコーヒーが急激に市場を伸ばしブラジルに次ぐ、世界第二の出荷量である。現地のコーヒー園では、干し草と牛糞を混ぜ堆肥化し有機肥料として使っているが、臭いや害虫、苗の病気に悩まされているケースが多い。ここでも日本が下水道で取り組んでいる様々な試みが、アジア諸国に貢献できるのである。第3種郵便物認可東南アジア諸国の産業部門GDPに占める農業部門の割合1.東南アジア諸国は肥料が欲 東南アジア諸国は、急激に経済発展を遂げているが、基本は農業国であり農業生産をいかに高めるかが国家の最大目標(GDPの増大と農村部地域の貧困層の解消)である。例えばカンボジアで同国の産業部門に占める農業の割合は48.1%であり、ラオスは41.1%、ベトナムは26.4%である。 これらの国はコメが最大の農業収入であり、まずは水資源の確保、農業用水路の整備に多くの国家予算を割いている。問題は化学肥料しい吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]19

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