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用水路〈カリフォルニア州水輸送システム〉山越えする水輸送パイプ星画像の解析から「州内に残されている水源は、あと1年分しかない」と警告している。さらに米国会計検査院は「全米48州のうち、ハワイとアラスカを除くすべての州は、中程度の干ばつに直面している」と報告している。つまり水資源不足は全米に達しているとも言える。3.カリフォルニア州の水対策 昨年1月に、ブラウン州知事は干ばつの非常事態宣言を発した。それは恒久的な水資源確保の政策と干ばつ対策である。水源の確保については行政側と農家との100年以上に亘る歴史的な政治的対立と水資源の帰属をめぐる論争で簡単に解決できていない。例えば6州(アリゾナ、コロラド、ネバタ州など)が水利権を持つコロラド川からの取水は、いままでカリフォルニア州が約束以上の過剰取水を繰り返してきた歴史があり、今後の取水量と水利権の価格について折り合いがついていない。また1600kmに及ぶ用水路から蒸発や不法取水を防ぐために、ブラウン知事は25ビリオンドル(約3兆円)第1792号 平成 27年5月26日(火)発行 をかけて山脈を貫くトンネル水輸送計画を提案しているが、これも農家の反対でとん挫している。 同州の干ばつ緊急政策として最大の水需要先である農業用水の30%削減と効率的な使用が掲げられたが、水利権を持つ農業関係者は大反発している。また水不足地域に住む住民も深刻である。庭への散水(週二日以上)や洗車は500ドルの罰金、さらに水不足が深刻な州都サクラメントでは罰金1000ドルと跳ねあがっている。ブラウン州知事は公共施設である州立大学、ゴルフコース、墓地(広大な芝生あり)、道路わき植栽などへの散水スプリンクラーの停止や公共用地内の芝生(約460万平方メートル)を「乾燥に強い植栽に植え替える」などの命令も出している。なぜなら都市部の水需要の半分は芝生や造園に使われているからだ。 もちろん恒久的な水確保の対策として海水淡水化プラント建設や下水処理水の再利用、下水処理水の地下注入(地下水の涵養)が計画されているが、多額の資金を必要としている。州議会は、この資金源として水利事業債権(80~110億ドル)の法案を提出する準備を進めている。同州の南に位置するサンディエゴでは、10億ドル(約1200億円)をかけて大規模な海水淡水化プラントを建設しているが、その完成は2016年である。また13年6月、筆者が参加した米国水道協会(AWWA)のデンバー総会でも、同州の水資源確保の95プロジェクト(再生水プロジェクト73ヵ所、地下水涵養22ヵ所、総額約450億円)が紹介されたが、完成までに時間がかかり、現在の干ばつをどう乗り切るのか、まさに「焼け石に水」の状態である。4.今後の見通し 州内の17都市は、このまま干ばつが続くとあと数ヵ月で水源池が空になると予測されている。また干ばつにより山火事が頻発している。例えば昨年1月には406件の山火事が発生している(例年は約69件)。もちろん消火のための貯水もない。昨年8月にはヨセミテ国立公園内で大規模な山火事が発生し、その大きさは宇宙衛星から観測できるほどであった。 このような背景で水利権を売買する水銀行(ウォーター・バンク)第3種郵便物認可

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