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EWSグローバル・ウォーター・ナビ 米国最大の上下水道に関する会議および展示会がイリノイ州シカゴで開催された(6月19日から22日)。ACE16と称されるこの会議には800を超える論文発表と商談のため1万1000人を超えるエキスパートが参加し、また500社以上が参加する展示会も併設されている。今回の最大のテーマは“IoT”技術を使ったビジネス関連の展示である。身の回りにあるすべての機器がインターネットにつながり、今までの生活習慣や社会を激変させようとしている。“IoT”産業革命によるビジネスへの影響は我々の想像を超えるものが沢山あり、関連機器やシステムの市場の大きさだけでなく顧客のニーズやデータ分析、そのビックデータによる社会活用によるさらなる巨大な経済効果が注目されている。 日本の上下水道業界も無縁ではいられない。米国で先行する“IoT産業革命”から学び、日本の次なる世界戦略を構築して欲しい。1.専門家会議の議題 会議の大きなテーマは、日本が抱える課題と同じように、100年を超す上下水道施設の老朽化対策、上下水道インフラへの投資、特にIoT事業(インターネットを使い、上下水道の施設および経営管理)第3種郵便物認可 向け技術開発と投資、さらには水質基準の強化に対する対策などである。特別セッションでは、米国が直面する問題解決として①ストームウォーター対策、②水の再生利用促進、③官民連携(PPP)でのインフラ投資環境の促進、④海水淡水化による飲料水供給、⑤シェールガス開発による水源汚染防止対策、⑥干ばつと地球温暖化対策などが挙げられている。 特に面白いセッションは、M&A(企業の合併と買収)促進会議である。米国には約5万を超えるウォーター・ユーティリティ(水事業体)があり、給水人口1万人以上を受け持つ事業体数は全体のわずか8%で、その事業体が全米第1825号 平成 28年8月30日(火)発行の給水人口(約3億人)の82%をカバーしている。逆に給水人口3300人以下の事業体数は全体の84%を占め、これらの事業体は経営的に厳しくM&Aの草刈り場となっている。州ごとでは、絶対的な水不足による干ばつ被害と過剰汲み上げによる地下水の塩水化に悩むカリフォルニア州、テキサス州、フロリダ州、メリーランド州などのM&A発表が目立っている。2.北米の水市場動向 北米の水処理市場規模は世界市場の約15~20%を占めるといわれており、2025年までに20兆円市場が期待されている。2016年時点での米国水処理市場は約12兆円であり、官民比率は6:4と見込まれている。展示ブースの大きさと出展社数から判断すると次のような傾向が見られる。① ITを活用したスマートウォーターメーター事業の急激な伸び 米国特許庁(USPTO)には既に300以上の“IoT”を活用したビジネスモデルが数多く申請されている。社会インフラ関係で、具体的には電力用のスマートメーターの米国水道協会“ACE16”年次総会会場吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]~IoT産業革命の波~17米国水道協会2016年次総会・展示会 イリノイ州シカゴで開催

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