を動けない農民は、高利貸しから資金を借り「井戸を掘る」、すぐ水が出れば良いが、中には100メートル掘っても出ない場合、それでも15万ルピー(約30万円)の支払いが必要だ。インドではこの10年間で約16万人以上の農民が自殺している。井戸掘りの資金、肥料を買うための資金繰りなど借金を苦にした人が多いという。◦インドの農業改革 モディ首相は、農業振興の目標として「水一滴当たりの収量の増大」、「農業技術者の増員」などを掲げている。具体的には、クジャラート州知事時代に、安定的な電力を有料で農家に提供し、灌漑設備を整備。その上で近代的な農業を導入し、同州の農業生産性を向上させた。この成功例をインド全体に普及させようとしている。政府は灌漑事業や、耕地整理を含めた農業開発支援や農村金融、農業指導、ITを活用した農業、農産物の貯蔵設備などに500億ルピー(約1000億円)を割り当てている。5.ボトルウォーター産業が躍進 インドではボトル水が年間約2600億円販売され、2020年にはその金額はガソリン販売総額を抜くのではないかと予想されている。過去5年間の統計によると市場の伸びは25%で、インド全土ではコカコーラ、ペプシが市場の約4割を押さえ、残りは無数にあるボトル工場で、水が充填され販売されている。インドには1200以上のボトル水工場があるが、必ずしも衛生的な処理がなされていないという。その原水も汚染された地下水であったり、不法に抜き取った水道水を詰めている例もある。イン第1820号 平成 28年6月21日(火)発行 ドのある都市の水道局が漏水箇所を調べていたが、毎晩決まった時間に公園付近で大量の漏水が発生するので検査員が調べに行ったら、タンクローリーに消火栓から水道水を移送中であった、もちろん盗水である。町ではボトル水は水道水より10~20倍の高値で売られている、まさに水商売の極意である。6.インド経済はトイレ次第 ジャワハルラール・ネール初代首相が、就任演説(1948年8月)の後、取材記者団から「祖国インドが発展する時は?」と聞かれた時「我が国が発展する時は、全世帯にトイレが設置された時だ」と答えている。それから68年経った今も、トイレ問題は遅々として進んでいない。 モディ新首相は、その選挙戦で「寺院よりトイレを」と主張し、さらに2014年8月の就任演説で「500万ヵ所の事務所には100日以内に必ずトイレを作る」ように命じているが、これは一日5万個のトイレを作ることであり、当然不可能とみられている。仮にできたとしても、糞尿の流れ込む下水道もないのが実態である。出所:UN Water and Sanitation in India 2015 Report第3種郵便物認可国連の援助で建てられた村落の共同トイレ(2015年)◦ 国民の半分6億人は、家の中にトイレがない 特に子供や婦女子は過酷なトイレ環境に直面している。村落の端にある茂みや窪地が野外トイレであり、早朝や日が暮れてから用を足している。この時が最も危なく、トイレ周辺に群がる若者による集団レイプが横行している。これらの危険を避けるために用を足すのを長時間我慢し、また集団での排便を余儀なくされている。◦トイレのある学校は40% 2012年インド最高裁は、インドの全学校に「6ヵ月以内にトイレの設置と安全な水を用意するように命じたが、遅々として進んでいない。現在、校内にトイレが設置されている学校は約40%であり、残りはすべて野外トイレ(空き地や草むら)である。さいごに アジア諸国の中でGDPを順調に拡大させているインドであるが、走り続ける為には水資源の確保や水管理、さらにトイレ設置が国家としての最優先課題であろう。
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