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第3種郵便物認可 日本の約半分1647m3/人・年である。降雨量が多いのはインド南部であり、しかもモンスーン気候で、6月初めから4ヵ月間で年間降雨量の四分の三の雨が降るが水インフラ(貯水池や灌漑用水路)が未整備なのでモンスーン後半では、貴重な水資源は洪水となって流れ去り、あとは乾いた灼熱の大地が残される。インド水資源省の発表では水資源の8割が農業用水として使われ、現在でも水不足が深刻であり、2030年には、さらに年間600km3の水需要(現在の1.5倍)が見込まれている。インド政府は「水資源が国の運命を左右する」として水資源の確保に奔走している。3.国家間の水争い◦インドと中国の水争い 中国はヒマラヤ山脈で隣国と接する流域に100以上のダムを作ろうしている。ヒマラヤの氷河や雪解け水は人口大国の両国にとり生命線であり、インド政府はお互いの水資源開発について水資源開発協定を締結し、「ヒマラヤ河川委員会」に参加を呼び掛けているが拒否されている。同じように中国はアジア最大の国際河川である「メコン河委員会」にも参加を拒否している。◦インドとパキスタンの水争い インドとパキスタンの国境地帯にあるカシミール渓谷北部のキシェンガンガ川で、逆にインドは水力発電ダムを建設している。パキスタンに流れ込む直前の地点である。パキスタン政府は、このダムが川の流れに影響を与えるとしてインド政府に中止を申し入れたが聞き入れられず、国際司法裁判所に提訴している。しかし工事は続けられている。 国家間の大きな争い、「20世紀は石油めぐる争い」だったが「21世紀は水をめぐる争いになる」と言った世界銀行セラゲルディン副総裁の言葉が現実となっている。4.インドの農業用水 耕地面積は1億8千万ヘクタールあり、世界第二位の規模を誇る。農業人口は労働人口の約半数(6億人、しかし8割が貧困層)で、GDPの16%を占めインド経済の柱でもある。この農業は前述のようにモンスーンという気候条件に大きく依存していることだ。つまり天水農業であり、モンスーンの多寡が農業生産量や、最終的には個人消費や国家経済を左右している現実がある。◦2013年は大干ばつ 2013年は過去40年間で最も少な第1820号 平成 28年6月21日(火)発行Index出所:CGWB Ground Water Year Book 2010-2011 Indiaい雨量であった。このため米、サトウキビ、小麦の生産が振るわず、食料価格が15%以上も高騰した。地球温暖化の影響で洪水も増え、多くの水田や畑地が洪水の犠牲になっている。旧式の灌漑設備、農業インフラの未整備、貯水意識の欠如、緑の革命(小麦用に耕地開発)による土地の疲弊などが重なり、天からの雨だけが頼りの悪循環を繰り返し農業生産性が上がらない状態が続いている。◦地下水も枯渇 インド全土では約2千万本の井戸があるが汲み上げ過ぎで地下水位は下がり続けている。特に北インドが深刻であり、それに加え水質汚染が激しくなっている。南部のデカン高原では地下水は豊富だが、井戸掘りの為に資金がいる。好調な経済発展の陰で、その場所地下水の水位(2011年)Depth to Water Level(m bgl)< 22 to 55 to 1010 to 2020 to 40> 40 mHilly Area

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