EWS■ グローバル・ウォーター・ナビ インド政府が5月末に発表した2015年度のGDP(実質国内総生産)成長率は、政府の予想通り前年度比7.6%増で、多くのアジア諸国のGDPが振るわない中、インド経済の絶好調さが際立っている。その背景は「モディノミクス」と称される3本の柱である。しかし今後のインド経済の先行きを考えると水とトイレ問題という大きなアキレス腱を抱えている。1.モディノミクスの3本柱 1番目の柱は外資の導入である。2014年5月に発足したナレンドラ・モディ政権は「メイド・イン・インディア」ではなく「メイク・イン・インディア」(インド国内でモノつくりを)をスローガンに掲げ、製造業の拡大を目指して積極的な外資の導入、インフラの整備、税制の簡素化などを推進し、多くの外国企業の投資を呼び込むことに成功した。米国の自動車大手、フォードの新工場の稼働やライバルのGM(ゼネラルモーターズ)工場の新規投資(10億ドル)、さらにシャープの買収で注目された鴻海精密工業(ホンハイ)も50億ドルの投資を決定している。つまり人件費が高騰している中国からインドへ生産拠点を移そうとしている外資系企業をうまく捉えた第1820号 平成 28年6月21日(火)発行 のである。 2番目の柱はインド中央銀行の信頼感の向上である。2013年9月にRBI(インド中央・準備銀行)総裁に就任したラジャン総裁は、成長の妨げになっていた高いインフレ率を押し下げ、物価の安定を取り戻すことに成功した。10%を超えていたインフレ率が目標以下の6%台まで低下し人民の実質的な購買力が増し、個人消費が経済成長を支えている。 3番目の柱は原油安である。インドは世界第4位の原油輸入大国であり、原油価格の下落が経済成長の追い風となっている◦経済の長期見通しも安泰 インドの魅力は人口動態にある。国連の推計では6年後の2022年に出所:GRDC Ganges Basin Station(1949~1973年までの平均データ)は中国の人口を抜き去り、総人口が世界一になる。その人口ピークになるには、それからさらに50年かかると予想され、つまり経済成長を支える人口増が、これから半世紀以上も続くのである。現在のインド人の一人あたりのGDPは2千ドルであり、中所得国の目標であるGDP1万ドル程度まで5倍の上昇余地が残されている。IMF(国際通貨基金)の調査によると過去10年間の株価は年平均で10.8%上昇しており、過去の成長率と株価の関係では、仮に7%台の成長を維持した場合は、インド株価は10%以上上昇し、向こう5年間での株価上昇率は2ケタ代の高い伸びも期待されている。 このように順風満帆に見えるインドの経済発展も大きなアキレス腱を抱えている。それは経済成長と国民生活を支える水資源の存在である。2.インドの水資源…絶対的に不足 インドは南アジア最大の国土面積(3287千km2、日本の8.7倍)を持ち、年間の水資源量は1897km3/年で、日本の4.6倍も有るが、一人当たりの水資源量は人口が多い為、第3種郵便物認可ガンジス川の月別流量(m3/s)■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]15インド経済のアキレス腱は水とトイレ問題
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