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の水道施設を整えた。これら戦前・戦後の台湾水道を支えた機器類は、台北の「自来水(水道)博物館」に保存されている。◦水利事業は八田與一 日本統治時代、台湾の主要産業は農業(稲作、サトウキビ、キャッサバなど)であり、水利施設の拡充は台湾経済の発展に重要な地位を占めていた。1901年、総督府は『台湾公共埤圳規則』を公布、以前からの水利施設を改修するとともに、新たに近代的な水利施設を建設することをその方針とした。八田與一は1920年から10年間で灌漑用水路網や当時アジア最大の烏山頭ダム(有効貯水量1億5千万トン)を完成させた。これら水利事業の整備は台湾の農業に大きな影響を与えた。台湾の教科書には八田與一の業績が紹介されており、毎年、彼の命日には慰霊祭も行われている。2)戦後の上下水道〈水道事業〉 1945年以降、水道事業は急ピッチで進められ現在水道普及率は97.5%、給水人口は2300万人に達している。しかしながら管路網が老朽化しており、漏水率が高く、漏水や無収水を合計した無収水率(NRW)は30%に達している。日本と異なるのは、水道水は総硬度に差はあるもののすべて飲用可であるが、ほとんどの市民は飲用や調理に水道水を使わず、別途購入した宅配水やペットボトル水を使用している。歴史的に水道水への不信があるようだ。〈下水道事業〉 先に述べたように下水道は雨水と汚水の分流式である。雨水下水道の普及率は66.5%でほぼ全国各地で整備されている。台北市の雨水下水道の普及率は96.7%であり、第1818号 平成 28年5月24日(火)発行 豪雨災害に遭遇しても首都圏を守る構造となっている。 問題は汚水下水道の全国普及率が43.5%であり、下水処理場も未整備で河川の水質汚染が問題となっている。首都台北市の汚水下水道普及率はほぼ100%であるが、台中市などは39.5%である。また県別では新竹県は70%、桃園県51.6%、苗栗県は18.8%と地域的に大きなばらつきがある。 この数値も台湾政府が第3期汚水下水道建設計画(2003~2008年)の6年間で約784億台湾元(約27億米ドル)を投資し、平均普及率を6%上昇させた結果である。3.水ビジネス市場◦上水道関連…管路の更新需要 台湾の水道関連ビジネス規模は約350百万米ドル(2017年)と言われ、伸び率は管網が4%、浄水プラントが6%である。水源開発や管路網の更新需要が主である。◦下水道関連…管網整備 下水道関連のビジネス規模は850百万米ドル(2017年)であり伸び率は管網が7.7%、下水処理プラントが4.2%である。◦民間の水処理…膜が今後本流か 水処理市場で使用される機材類(配管、バルブ、ポンプ、膜類など)の2015年度の市場は約800百万米ドル、その伸び率は5~6%と見られ2018年度には950百万米ドルに達すると予想されている。10年ほど前は電子産業や半導体産業を中心に超純水装置などの高度処理の需要が多かったが、現在は半導体工場の中国移転などにより第3種郵便物認可左上:中国製鐵(高尾)の水回収プラント(RO膜+UF膜、処理量1万3500m3/d)右上:GE製RO装置下:日本液体清澄化技術工業会(LFPI)視察団(2016年4月14日、台湾高尾市)団長:松本幹治・横浜国立大学名誉教授(前列・左から三人目)、同二人目が筆者

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