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SEW グローバル・ウォーター・ナビ 遂に最悪の事態がやって来た。米国カリフォルニア州は4年前から続いていた記録的な干ばつが加速し、遂に500年ぶりの大干ばつに突入した。このままでは州が消えてしまう。経済損失は既に3ビリオンドル(約3600億円)に達し、失業率も10%を超えた。今年の4月1日(米国時間)ジェリー・ブラウンカリフォルニア州知事は、ついにすべての水需要者に対し、強制力を持つ25%節水を義務付ける行政命令を出した。 途上国における水不足問題はよく知られているが、先進国でさえ危ない橋を渡っている。ここに水資源の有無が国家経済に与える影響についての一例を紹介する。1.いつから降雨がないのか、干ばつの程度 昨年のカリフォルニア州の降雨量は観測史上(1849年から)最低であり、例年の三分の一以下の年間180ミリしかなかった。今年はさらにひどく古木の年輪分析より500年ぶりの干ばつが確認された。その後も雨は降らず記録的な大干ばつが加速している。 同州は米国で最も人口が多く、約3800万人が居住し、年間984億トンの水資源を消費している。日米国干ばつ地図(2015年5月5日現在)色が濃いところほど干ばつ被害を受けている第3種郵便物認可 本全体の水需要量は年間約830億トンであり、米国一つの州で日本全体をしのぐ水資源を費やしている。 そもそも同州は水の不足する不毛の土地であり1840年代のゴールドラッシュで爆発的な人口流入増加があり、ゴールドラッシュが過ぎ去ったあと多くの人々は農家として定住した。降雨量が多いのは州都サクラメントの北方であり、そこから延々と山越えする大口径パイプや用水路を通してサンフランシスコやロスアンゼルス地域に送られ、人々の生活や経済活動を支えてきた。 主要な7つの水輸送システムの総延長は1600kmに達し、水輸送(ポンプステーション)および水利第1792号 平成 27年5月26日(火)発行用に関わる電力消費量は、同州全体の電力消費量の12~19%に達する(2001年IWA調査、季節により異なる)。日本の水処理(上下水道)全体に関わる電力消費量は全電力消費量の約1.5%なので、その数値の大きさに驚かされる。2.どのくらいの水が足りていないか 水資源の9割以上は降水量とシェラネバタ山脈(スペイン語で雪の山脈)の雪解け水に支えられているが、年々減少する降雨量、さらに地球温暖化による積雪の減少により河川流量の減少と地下水位の低下が著しい。サクラメント川、サンホアキン川の流量は約半分に減少している。近年、入手可能な水資源は必要量の三分の二に留まっている。昨年ブラウン州知事はすべての水使用者に対し20%の水使用量の削減を呼びかけたが、ほとんど効果がなく今回25%節水の行政命令となった。行政命令は9月末まで続けられる。なぜ9月末までか、シェラネバタ山脈に雪が積もる時期までである。 米国航空宇宙局(NASA)は衛~500年に一度の大干ばつ、州が消えるのか~吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]02米国・カリフォルニア州

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