第3種郵便物認可 査をする意向を示している。またフリント市の対策について同市の出身の映画監督・マイケル・ムーア氏は「単なる水の危機ではなく、人種差別の危機および貧困による危機だ」と糾弾している。5.不可解な水道行政 現在、FBIやEPA、さらに連邦検事局、警察など関係者で、なぜこのような鉛汚染が引き起こされたか、鋭意捜査中であるが、主題は①だれがフリント川の腐食性を無視し、水道水源としたのか、②水処理装置の設置(現在は塩素消毒のみで、ろ過池などがない)の完成を2016年としながら、なぜ完成しない前に市民に給水したのか、③フリント川に水源を切り替えてから、市民からのクレームが多発したが、なぜ公開されなかったか、④消毒用の塩素の使い過ぎでトリハロメタン(発がん性物質)が検出されていたが、なぜ、その対策と公表がされなかったのか、⑤2015年10月時点で、市民からの水道水に対するクレーム件数が4万5千件寄せられていたが、紙カード記載で書類キャビネットに収納され、電子化された率はわずか25%でしかなく、関係者共通の認識にはなっていなかった、その原因はなにか、⑥フリント市の管財人としてのミシガン州知事は役割(義務と責任)を果たしたのか、等、不可解な水道行政も新たな捜査対象になっている。もちろん市民から多くの訴訟が出されており、また行政の責任を問う刑事事件にはミシガン州の身内ではない「特別検査官」が任命されている。6.今後どうするのか フリント市には全米から続々とボトルウォーターや鉛除去用のフィルターが救援物資として寄付されている。しかし州兵の派遣や連邦政府による資機材や医療チームの派遣も90日限りで活動が打ち切られる。10万人の安全な水道施設の構築には、まさに「焼け石に水」の状態である。調査チームによると老朽化した水道管の取り換えには、15億ドル(約1800億円)と10年の工期を必要とする。また子供たちの鉛の健康被害を救うためには1億ドル(120億円)、当面の水道水を飲めるようにする鉛除 第1811号 平成 28年2月16日(火)発行去フィルター費用として2800万ドル(33.6億円)が必要になると試算している。小さな予算削減が招いた大きな代償に直面している。7.次期大統領候補者はどう考えているか アイオア州の党員集会・予備選挙が終わり、民主党や共和党の候補者はさらにヒートアップし激しい舌戦を繰り広げている。民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官、バニー・サンダース上院議員、また共和党のテッド・クルーズ上院議員、さらには不動産王のドナルド・トランプ候補者も、皆一様にミシガン州知事、フリント市の対応を「水道は命の水であり、近代国家の中心である米国で、こんな事件が起こるのは世界の恥であり、関係者は強く糾弾されるべきである」と述べているが、大統領候補者は誰一人として、「私が全米の都市に共通する老朽化した水道インフラを整備する」とは宣言していない。水道インフラの整備問題は票に直結しないものと見られ、まさに水に流されている。全米から寄贈されたボトル水2016年1月12日2016年1月25日2016年1月23日
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