10倍(150ppb)が検出された。なぜ水道管が腐食し、高濃度の鉛イオンが溶出したのか。フリント川の水質はデトロイト市が使っている五大湖(ヒューロン湖)の水質と異なり腐食を引き起こすサルファイド(硫化イオン類)やクロライド(塩素イオン類)が多く含まれ、市内の水道鋼管や鉛管が急激に腐食し高濃度の鉛イオンが水道水中に溶け出したものと推定され、関係者やバージニア工科大学の調べでも末端給水栓にて鉛イオン500ppb、さらに1万3200ppbを検出している。 このような高レベルの鉛イオン入りの水道水を10万人(約3万3千世帯)の市民に約2年にわたり給水していたのである。市当局は鉛問題が発覚すると同時に、再びデトロイト市から水道水源を購入し、市民には安全性をPRしたが、大きく腐食した配管からは今も鉛イオンが溶出している。医師団は現在、妊婦や老人、子供に対し「今後もフリント市の水道水を飲まないように厳重に警告」している。2.鉛中毒の怖さ 成人では、皮膚炎や発汗、髪の毛が抜ける、腎臓障害などが顕著で、妊婦では流産などの健康被害が知られているが、乳幼児、子供たちにはさらに大きな健康被害がもたらされる。子供たちが鉛中毒になると脳細胞に直接作用し記憶障害やIQの低下、学習障害、健康障害さらに異常行動の増加となって現れ、これら鉛による健康被害は不可逆的で、一生涯にわたって決して治ることのない障害なのだ。小児科医師団は、フリント市の子供たち(6千人から1万2千人が対象)の鉛中毒の健康被害は「5第1811号 平成 28年2月16日(火)発行 年から15年にわたる長期的な経過観察が必要だ」と語っている。3.レジオネラ菌でも10人死亡 さらに調査を進めると、驚くべき事実も判明した。汚染されたフリント川に肺炎を起こすレジオネラ菌が含まれており、2015年に87件のレジオネラ肺炎の患者が報告され、そのうち10人が死亡している(市当局は、水源の切り替えとの因果関係は少ないと主張している)。4.ミシガン州政府とフリント ミシガン州のリック・シュナイダー知事は、この緊急事態を打開する為に連邦政府に31億ドル(約3720億円)の拠出を要求していたが、オバマ大統領は、当初これは自然災害ではなく、人災であるとして拠出を拒否していたが、10万人が水道水を飲めない事態の解消や大統領選挙への影響を考え、連邦政府から5億ドル(約600億円)の拠出にサインし、安全な飲料水を確保する緊急事態宣言を発表した。 フリント市では水管理の責任者が辞任し、デトロイトの水源に切り替え、住民に対し「当市は連邦政府の飲料水基準を全面的に遵守しているが、水道水を飲むことは危険です」という公式見解を発表している。ミシガン州の検事総長は「フリント市の鉛中毒は、日常生活で必ず必要な水道の安全が確保できなかったという基本的な人権問題である」として徹底的な調第3種郵便物認可問題水源となったフリント川シュナイダー知事の命令で調査した老朽化・腐食が進んでいる水道管市の対策
元のページ ../index.html#32