Kウォーターのブース【筆者略歴】よしむら・かずなり/1948年秋田県生まれ。72年荏原インフィルコ㈱入社、94年㈱荏原製作所本社経営企画室部長。営業、開発、市場調査、経営企画に携わり、環境分野ではゼロエミッション構想を日本に広げた。98~01年には国連ニューヨーク本部に勤務し、環境審議官として発展途上国の水インフラを指導する。05年グローバルウォータ・ジャパン設立。水の安全保障戦略機構・技術普及委員長、経済産業省「水ビジネス国際展開研究会」委員などの要職も務める。「水ビジネス110兆円水市場の攻防」(角川書店)、「日本人が知らない巨大市場水ビジネスに挑む」(技術評論社)、「水に流せない水の話」(角川書店)、「水ビジネスの動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)など著書・執筆多数。NHK、テレビ東京、フジテレビ等で水問題を判りやすく解説している。◦「グローバル・ウォーター・ナビ」は、本号より月1回掲載します。第3種郵便物認可 社会と連携しながら、地元企業が国内外の水市場をリードできるよう積極的に支援」すると宣言した。 この背景には韓国の大きな水ビジネスの野望が隠されており、日本抜きで進められている。それは韓国政府が主導する「アジア水協議会(Asian Water Council)」の設立構想である。 韓国は協議会メンバーとして、国際組織やシンガポール、ベトナムなど15メンバーを既に獲得し、アジア諸国向けの水関連ビジネスの総取りに国を挙げて取り組んでいる。 では韓国の具体的な動きを見てみよう。 昨年6月、筆者も参加したシンガポール国際水週間期間中に韓国政府主催「第一回アジア・ハイレベル円卓会議」が開かれ、そこで韓国が主導する「アジア水協議会(AWC構想)」が発表された。第二回目の円卓会合は韓国、慶州で開催(2014年10月)、そこでアジア開発銀行(ADB)、ユネスコ、世界銀行(WB)、メコン河委員会、アジア太平洋水フォーラムなど、国別ではシンガポール、台湾、ミャンマー、ベトナム、タイ、ウズベキスタンが参加表明した。第三回円卓会合は2015年2月にネパールで開催され、各国際機関や各国の役割責任が示された。◦ 水インフラに対するファイナン【日本外しの構図】 韓国は、アジア最大の水に関する首脳級会合「アジア太平洋水フォーラム(APWF)」を主導してきた日本から、アジアに於ける水の主導権を奪い取る国家戦略に邁進している。当然、韓国は今後設立される「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」を主導する中国とも連携を深めている。簡単に言うとウォーターハブで先行するシンガポールを巻き込み、ファイナンスは中国の主導するAIIBに、総合プロデューサーは韓国(Kウォーター)にお任せと言う「日本外しの構図」である。ス問題:アジア開発銀行(ADB)◦水と衛生:シンガポール◦ 国境を横断する水問題:メコン河委員会とベトナム◦水力発電問題:ネパール◦ 水圏エコシステムはウズベキスタンである。6.日本のとるべき姿 日本は「水と衛生」に関する政第1790号 平成 27年4月28日(火)発行府開発援助(ODA)では長年、世界最大の資金提供をしている。また日本はアジア開発銀行向け最大の出資国、世界銀行へは第二位の出資国であるが、しかし水ビジネスを含む多くのインフラビジネスでは世界から相手にされない姿が浮き彫りになっている。世界から尊敬される為には、資金提供だけではダメで、日本として明確な政治的なポリシーに、相手国のレベルに合わせた技術提供がなければならない。 上記のような韓国の動きに対し、筆者は昨年から省庁の幹部や政治家に警鐘を鳴らしてきたが、韓国の動きすら把握していない関係者が多かった。ではどうしたら良いのか。2018年に東京で開催されるIWA世界会議は、日本のプレゼンスを高め、アジア諸国向け水の主導権を取り戻す最大のチャンスであり、今から政府関係者、政治家、学会、水に関する企業などが力を合わせ、日本独自の戦略を練ることが急務であろう。21世紀は水の世紀である。
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