達成日時が示された。水枠組み指令は複雑な遂行プロセスであり、加盟国から多くの問題点が指摘されたが、走りながら加筆修正をすることとなった。指摘された主要な問題点は①非常に厳しい指令の実施日程、②指令内容の複雑さと問題解決策の多様性、③課題に対する科学的・技術的な根拠の脆弱性、④技術的なガイダンスの不備、⑤共通認識の不足などが提案され、このような課題を解決する為に4つの作業グループが設立された(情報共有グループ、ガイダンス作成グループ、情報管理グループ、適用試験・確認グループ)。各項目の達成期限は12月22日としているが、欧州らしくクリスマス休暇の始まりを期限としている。【表】2–3 水枠組み指令の実施状況 EU域内の水生態系に影響を及ぼす化学物質の特定とそのモニタリングが主体的に進められた。1)有害汚染物質の特定作業様々な水質改善政策を包括的に見直したものであり、その起源は1975年に制定された「飲料水として利用される河川及び湖沼の水質基準」である。この基準は飲料水だけではなく、魚介類のための水質、海水浴場の水質、地表水の水質基準なども定められている。さらに1988年欧州委員会ではフランクフルトで開催された「水質に関する欧州閣僚会議」で上記の基準見直しが討議された結果、改正案が提案され「都市向けの排水処理指令及び硝酸塩指令」が採択された。1995年、欧州委員会は「欧州地域全体の水質会議」を開催し、加盟各国から250名の専門家の参加を得て、今までの水質改善の目的と手段を抱合した「水枠組み指令案」が提案され現在の水枠組み指令に繋がっている。2–1 水枠組み指令の目的 水枠組み指令の目的は、「欧州域内における水質に関する環境汚染防止と、現状の水環境の改善」である。EU域内には約10万の水源があり、その80%が河川水であり、15%が湖沼水、沿岸水が5%である。 水枠組み指令の具体的な目的として①水質・水量・生態系の観点からEU水域の良好な状態を達成する、②EU全域を流域ごとに分割し、その分割単位で流域計画を策定し良好な水域を達成する、③水管理における重要な決定には、利害関係者、特に住民の参加を強化することが明記されている。2–2 水枠組み指令の環境目標 各水資源(地表水、地下水、水環境保護地区)に関し、それぞれの環境目標が設定されており、2015年を第一次目標達成年としている。加盟各国に対し、具体的な内容と第1803号 平成 27年10月27日(火)発行 日 程指令に準ずる法律や規制、各条項が発効(第24条)欧州委員会に所管官庁のリスト提出(第3条)特別保護地区の登録(第6条、7条)各国は国家レベルで目標値を設定すること(第17条)EUレベルの優先汚染物質のリスト(第16条)が存在しない場合、各加盟国は環境水質基準や汚染源の管理に関する基準を設定すること(第16条)第一サイクルとして管理計画の見直しとフォローアップ、諮問と中間発表を行うこと(第13条から15条)以後6年毎に 水枠組み指令の重要項目として水生態系に有害な物質の特定作業(第16条)が挙げられ、有害物質を特定するとともに、これらの物質を20年以内に全廃することが求められている。EU加盟国から約82万件のデータの提出を受けモデリングで解析、その結果特に危険性が高い33物質(ベンゼン、ジクロロメタン、シマジンなど)が特定された(2001年)。そのうち11物質が「優先的に処理対象とする危険物質」、他の14物質が「優先的な処理対象危険物質の候補」とされた。2)地下水を汚染する化学物質の特定 特に地下水を汚染する化学物質を特定する作業で、前述の33物質に新たな8物質(エンドリン、トリクロロエタンなど)を加え、41種類の有害物質の使用・排出を制限する目標が示された(2006年7月)。実施項目第3種郵便物認可水枠組み指令の実施日程概要2000年12月22日水枠組み指令の発効(第22条)2003年12月22日(発効から3年以内)2004年6月22日(発効から4年以内)2004年12月22日水資源利用の経済的影響に関する分析の完了(第5条)2005年12月22日地下水汚染防止策とEU水質基準の合意が存在しない場合、2006年12月22日河川流域の水質管理のモニタリング・プログラムの開始2007年12月22日河川流域地区の水質管理に関して重要課題の中間報告2008年12月22日河川管理計画案を発表し諮問を行うこと(第14条)2009年12月22日河川流域の環境目標達成の方策を決定(第11条)2010年12月22日水資源の適正価格の実施2012年12月22日各河川流域の環境目標達成プログラムの実施、中間報告2015年12月22日主要な環境目標を達成(第4条)2015年12月22日2021年12月22日第二サイクル目標年度2027年12月22日第三サイクル目標年度
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